WELLNESS
お腹もメンタルもすっきり! 美腸のプロに訊く最新腸活術
Reported by Yuumi Fujii<dis-moi>
2022.12.15
いまやすっかり当たり前となった“腸活”。便通改善だけでなく、免疫力を調整したり、睡眠の質を高めたり、さらにはストレス軽減にも大きく関係しているという話を耳にすることも多く、なんとなく気になっている人も多いのでは? 健康の要ともいえる“腸活”だからこそ、一時的に取り入れるのではなく、きちんとライフスタイルに取り組めるよう、腸の働きに注目した“腸律”を提案している腸律師®︎であり、「腸律サロンセラピーエ」オーナーの小澤かおりさんに“腸活”についてお話を伺った。
身体の健康=腸の健康だからこそ、改めて腸活の意義を考えてみよう
積極的に「腸活をしよう」と思わなくても、腸活アイテムが世の中を席巻しているいま、腸にいいという食品に目がいったり、腸活ライフのワードが気になる人は多いはず。
「“脳腸相関” という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、生物は腸ができてから脳が発生しているため、ある意味、脳は腸をサポートするために生まれた臓器なんです。だから、腸が健康でないと、脳の働きも鈍くなり、集中力や判断力の低下や鬱につながったりします」
確かに、便通が整っていないと、体が重く感じたり、肌あれを実感する人は多い。
「腸の動きが悪いと聞くと、最初に思いつくのは便秘などの排便トラブルではないでしょうか。本来排泄されるべき便=老廃物が腸内に滞留し、腸壁に汚れがつき、発酵・腐敗をしてガスが発生します。これはよく『おなかが張った状態』『おならがくさい』などと表現されますね。免疫機能の70%は腸に集まっているため、腸内の菌バランスが悪くなると免疫機能も低下してしまいます。
しかも、腸は血液を作る場所でもありますから、腸内の内容物が腐敗しているとこれが腸から吸収され、血液に乗って全身をめぐってしまいますし、そもそも腸の動きが悪いと血流も悪くなるため体温が低下し、免疫力が下がります。しかも、血流が悪くなることで冷えやむくみが慢性化します。その結果、代謝が悪くなり、太りやすくなったり、肌あれしたり、老化が進行する原因に。
もうひとつ問題なのが、幸せホルモンといわれる脳内伝達物質であるセロトニンの分泌量の低下。セロトニンは脳では2%ほどしか分泌されず、90%以上が腸内で分泌されます。さらに自律神経調節にも関係があるため、分泌量が低下すると、不眠など睡眠の質が悪くなり、疲労がリカバリーできなくなります。すると、自律神経がさらに乱れて……と、さまざまな不調が身体に現れます。つまり、腸の健康が悪化すると、身体だけでなく、メンタルにも影響が表れるのです」
腸の動きが悪くなることで起こる
身体の不調
“腸律”とは、腸が自ら動き、“腸活”しやすい状態にすること
腸活する意義がわかったけれど、小澤さんが提唱する“腸律”とはどういったことなのだろうか?
「一般的にいわれている“腸活”は、さまざまな菌を取り入れることで腸内環境を整え、健康を維持することをいいます。私が提案する“腸律” 的腸活は、腸内の菌を育むために腸自体を健康にしていくという考えです。
いくら腸にいい食生活をしても、どんなにいいといわれる菌を取り入れたとしても、腸自体の動きが悪く不健康だと、腸内でそれらを吸収することも、活用することもできず、残念な結果となってしまいます。
実は腸は身体の防衛本能を司っており、ストレスを感じたら、便通をはじめ、おなかの張りや身体の不調として教えてくれる働きがあります。ですから、寝不足が続けば肌あれを起こしたり、気持ちが落ち込んだり。だからこそ、自分の不調はどこから来ているのか? 客観的に見るクセをつけ、腸にかかる負担を少しずつ取り除いていく生活を心がけてください」
ストレスでおなかの調子が崩れるのは、多くの人が経験したことがあるはず。
「しかも腸は感情を持っているし、記憶力もあるんです。たとえば、直腸まで便を移動させ排便の準備ができたら、腸は便通の指令を脳に送ります。しかし、いまは忙しいから、外出中だからと排便のサインを無視していると、腸は『この人は指令をしてもトイレに行かない人』と記憶してしまうんです。すると、腸自体が便意を感じにくくなり便秘になってしまうというわけです。排便の指令を感じないからといって、便そのものがなくなるわけではありませんからね。腸内の滞留時間が長いと、老廃物の水分がどんどん腸内に吸収され、スムーズに排便できなくなったり、ポリープができたり、最悪ガン化するなど、腸の環境は悪化の一途をたどってしまいます」
腸の動きをよくすることが、腸活を成功させる秘訣
「いまは腸内環境ばかりがクローズアップされがちですが、腸自体の健康との両輪で“腸活”をするのが効率的です」と小澤さん。
「もちろん、腸にいい菌を取ったり、腸を育むために水溶性食物繊維を取ったりすることは大切です。ただ、私が指導する“腸律セラピー”では、『あれを食べないで』ではなく、『朝昼晩の食事でいろいろ召し上がって』とアドバイスしています。たとえば、朝がパンで、昼がピザで、夜がパスタ……と、全食小麦にする、または全食野菜にするのではなく、多種多様なものを食べるのが理想。
また、朝食を食べたほうがいいのか、食べないほうがいいのかという質問が多いのですが、“なにを食べる、食べない”ではなく、“咀嚼する”というのが重要。朝にリンゴひと切れでもいいので、口の中でジュースになるくらい咀嚼することで唾液が分泌され、消化酵素が働くようになり、腸も動きだします。すると、腸が動くことで体温が上がり、免疫力もアップし、代謝がよくなります。
また、腸は記憶すると言いましたが、ルーティンが大好きなんです。だから、このルーティンが崩れるとたちまち不調が顔を出します。だからこそ、逆にこの特性を利用し、『起床後、歯磨きをしたらトレイに行く』『オフィスに着いてコーヒーを飲んだらトイレに行く』など、たとえ便意を感じていなくても、一連の動きの中に5分間トイレに座る習慣をつけると、これを腸が覚え、便秘解消に役立ちます」
【あなたの腸環境が悪化する原因は?】
- □忙しくて自分のことを後回しにしがち
- □食事が偏りがち
- □早食いであまり咀嚼しない
- □ストレスを抱えっぱなしのままにしている
- □便通に一定のリズムがない
- □朝食は飲み物で済ませる
- □ついドカ食いをしてしまう
- □シャワーで済ませがち
- □あまり水分を取らない
自分でもできる腸律セラピーで“自ら動く腸”へ!
「脳からの指令で腸を動かすのは難しいのですが、ハンドケアで腸の動きを促してあげることは可能。できれば、起床直後と就寝前の1日2回を続けることで、“自ら動く腸”に整えられます。ただし、腸はとてもデリケートなので、強く押すのはNG。力が入らないよう寝た状態で、やさしくケアするのがお約束です」
【STEP1】
あお向けに寝ころび、おへそを中心とした「小さな時計」「大きな時計」をイメージする
6時は恥骨の上、3時と9時はおなかの真横のくびれ部分、2時と10時は肋骨の中、12時はみぞおちあたりを目安に。肌は露出せず、洋服の上や布を1枚かけた上からケアするのがおすすめ。強い力で行うと腸が反発し、よけい動かなくなってしまうため、“まぶたをやさしく押して心地よい圧”と同じくらいの強さで行なってください。
【STEP2】
両手の4本の指で、小さい時計の6時から時計回りにケア
利き手ではない手の人さし指、中指、薬指、小指の4本のつけ根から指先までの面を小さい時計の6時の位置に当て、利き手の4本の指を上から重ねる。垂直にやさしく押してから左右に10回揺らす。7時→8時……と時計回りにケアをし6時の位置まで戻る。
【STEP3】
大きい時計も6時からスタート
大きい時計も同様に、6時の位置から時計回りに10回ずつ揺らしていき、6時の位置まで戻る。
【STEP4】
腰骨の内側をほぐし、腸を引き上げて収める
右手のひらの側面を右腰骨の内側に当て、左手を添える。骨のカーブに沿って上下に10回ほぐしたら、左側も同様に。
次に指を重ねて下腹部に当て、下がった腸を持ち上げ、そのまま手のひらをパタンと倒しておなかを軽く押さえる。ゆっくり10数えたら終了。
【腸律セラピーの注意事項】
・必ず寝た状態で行う
・強く押さない
・指で突っつかない
・速く動かさない
「腸律セラピーは、やさしい圧なのでいつでも1日何回行ってもOK。いつも自分のおなかに触るクセをつけると、硬さや詰まりなどがわかるようになってきます。便通がスムーズになる、おなかの張りが取れるなど、効果をすぐに感じる人もいますが、腸の状態は生活習慣や食事にも左右されますので、まずは2週間を目安にやってみてください。続けることで腸が自ら動き、きちんと消化吸収できるようになり、腸活が生きる腸になります」
腸の状態は、まさにいまの自分の生活がそのまま反映される。そのぶん、不調の原因を取り除けば回復が早いのも特徴。だからこそ、不調を見逃さず、腸の環境を整えて、 “快腸”な毎日を送ろう!
KAORI OZAWA | 小澤かおり
Therapist
介護士として利用者の方々のお世話をするなか、腸の動きが悪くなることで持病や病気が進行する人たちの姿を目の当たりにし、腸の大切さに開眼。腸活の権威に師事をし、カウンセリングを中心としたセラピーを大切に、心と身体の調律(腸律)を行う唯一の施術「腸律セラピー®︎」を開設。セルフ腸律のレクチャーのほかサロンで施術を行う。
Photo: Mariko Tosa
Content Writing
Yuumi Fujii | 藤井優美
Beauty Editor
『ELLE』『Women’s Health』などの雑誌・WEBメディアでも執筆。美容系編集プロダクション「dis-moi(ディ・モア)」主宰。エステティシャンを経て、美容エディターになること25年以上。美容専門誌をはじめ、多くの女性誌で美容情報や女性のヘルス特集を手掛ける。年間、数多くの研究者、医師、美容家などの取材をこなす。