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FOOD

おいしくて、地球にやさしい! 
今おすすめのサステナブルなレストランへ

Reported by Megumi Komatsu

2021.10.15

NYやヨーロッパではスタンダードになりつつある、レストランにおける“サステナブル”な取り組み。環境に配慮し、食の未来を守ろうという意識は日本の飲食業界でも少しずつ広がっている。食のプロは、今どんな取り組みを行っているのか? エシカルな視点に基づいて食材選びなどを行っている、東京・大阪・福岡の3都市のレストランをご紹介しよう。

サステナブルなレストランが増えている理由

外食産業におけるサステナビリティへの取り組みは、欧米では2000年代後半から大きなトレンドとして続いてきた。たとえばイギリスでは、2010年に「サステイナブル・レストラン協会」(SUSTAINABLE RESTAURANT ASSOCIATION)が発足し、飲食店がサステナビリティに配慮した運営ができるようにするための取り組みがスタート。2018年には日本支部の活動も始まり、加盟レストランは着実に増えてきている。また、日本では2019年に食品ロス削減推進法が施行されたことも、人々の意識や行動の変化につながった。さらにレストランガイド『ミシュランガイド東京』は、持続可能なガストロノミーを実践するレストランを評価する指標「グリーンスター」を2021年版で新設。こうした流れを受け、既存のレストランもさまざまな形でサステナブルな取り組みをスタートさせている。

1. 規格外の食材を積極的に生かす 「アルマーニ / リストランテ」(東京)

環境問題に対する意識の高さでも知られるデザイナー、ジョルジオ・アルマーニ氏が監修する「アルマーニ / リストランテ」は、東京・銀座のモダンなイタリアンレストラン。日本の旬の食材を取り入れたコースの洗練された味わいに定評のある同店は、品質自体に問題はないのに廃棄されることになっていた食材を使ってコースを作り、2021年3月から「ロスフードメニュー」(¥11,000)と名付けて提供してきた。

そもそも日本で1年間に生まれる「食品ロス」の量は、世界の食糧援助量の約 1.6 倍に相当する612 万トンに上っていた(平成29年度)。2020 年はコロナ禍の影響でさらにフードロスが増える見込みで、問題の改善に取り組むため「フードロスバンク」が誕生。「アルマーニ / リストランテ」の「ロスフードメニュー」に使われるのは、この「フードロスバンク」を通じて仕入れる規格外の野菜や、新型コロナウイルス感染症流行の影響により出荷先を失った食材ばかりだ。といっても、「ロスフードメニュー」で提供される7皿の料理は、目に美しく、洗練された味わいで、満足度は通常コースとまったく変わらない。

「フードロスバンク」の協力のもとに調達される規格外の野菜は、色や形、大きさにばらつきこそあるが、料理長のカルミネ・アマランテ氏は個体差を個性として生かす達人。初夏に好評を博した「トマトのヴァリエーション」は、滋賀県FARM KEIのさまざまな種類のトマトがあったからこそ生まれた前菜だ。どのトマトをどう生かすかは、アマランテ氏がすべて試食して決めたとのこと。もっとも糖度の高い赤いトマトは乾燥させてペーストにしてからハーブとニンニクで香りをつけてジェラートにし、さらに湯むきして果実感を生かしたトマトと、さらりと爽やかなスープが合わせられている。シェフによると、湯むきしたトマトの皮も乾燥させて粉末にして使っているそう。食材を生かすとはこういうことか! と、料理好きなら感動せずにいられない工夫が満載だ。

「ロスフードメニュー」では、メインディッシュにも新型コロナウイルスの影響で出荷先を失った魚や肉が使われている。たとえば金目鯛は、飲食店の閉店などの影響で出荷先が大幅に減ったために出荷されなくなったもの。もちろん品質には問題はないが、金目鯛はアマランテ氏にとってはなじみのない日本の食材だ。しかし「新しい料理を作るのが楽しい」と語る彼にとって、金目鯛を使ったメニューを考えることは楽しい作業だったよう。金目鯛の生かし方を尋ねると、「丸一日風に当てて乾燥させ、醤油・酒・白ワインでマリネし、昆布締めにしてから備長炭で皮目をパリッと焼き上げました」と教えてくれた。この金目鯛は、枝豆とポワロー、ブロード(だし)を炊いて作った濃厚なソースと、魚の骨のだしとチェリートマト、カフィアライムの葉を煮込んだスープをかけて楽しむ趣向。ひと口味わうと、シェフの美味を追求する情熱が伝わってくるようなひと皿だ。

「アルマーニ / リストランテ」の「ロスフードメニュー」は2021年10月末でいったん終了するが、レストランではこれからも規格外のトマトをソースなどに生かしていくとのこと。シェフは今後も美味の追求とフードロスの削減に同時に取り組んでいくつもりだ。

アルマーニ / リストランテ

東京都中央区銀座5-5-4 アルマーニ / 銀座タワー 10F&11F
TEL.03-6274-7005

http://www.armani-ristorante.jp/

営業時間:ランチ11:30〜15:00(ラストオーダー14:00)/ディナー17:00〜20:00(ラストオーダー 18:30)
定休日:月曜日
ランチ¥5,500〜/ディナー¥12,000〜/ロスフードメニュー(ランチ・ディナー共通)¥11,000(2021年10月末まで)

※新型コロナウイルス感染症の影響で営業時間が変更になる場合があります。※料金は消費税・サービス料込みです。

2. オーガニック野菜の端材をコンポストにして畑に還元する「BELLA PORTO」(大阪)

大阪・中津の「ベラポルト」は、自社農園のオーガニック野菜を生かしたイタリアンが評判の一軒家レストラン。日本サステイナブル・レストラン協会の加盟レストランでもある。

「ベラポルト」で提供しているのは、美と健康をテーマにしたイタリア料理。無農薬野菜のスープから始まる全6品の「美ZENランチコース」(¥2,200)がいちばん人気だ。その中に登場する「美ZENプレート」は、ロマネスコ、桃カブ、レッドアンティーブ、根パセリ、ビーツ、芽キャベツ、菊芋など、旬の野菜をふんだんに使った名物料理。さまざまな野菜の下にはパイ生地が敷かれており、それを「ビーツソース」「サフランソース」「豆乳チーズソース」といったソースやドレッシングで味わう趣向だ。コースにはもっちりしたフォカッチャ、パスタ、メインディッシュ(魚料理または肉料理)、焼き菓子と本日のデザートが付き、全部で40種類以上のオーガニック野菜が使われる。そうした野菜の端材は、乾燥させてパウダーにして料理やスイーツなどに使っているが、それでも使えない部分はコンポストにして自社農園の畑に還しているという。

大阪府内にある自社農園「KIMIYU農園」は、株式会社東山べジフル(農家)の大西氏が管理を行っているが、「ベラポルト」のスタッフも全員シフト制で畑に通っている。

料理人が自ら畑で作業し、農家から学びながら野菜を育てる経験が、野菜をよりおいしく生かす力になるのだとか。畑作業やサステナビリティの取り組みは、若いスタッフたちのモチベーションにもつながっているという。

「ベラポルト」では今後、堆肥化できるお皿を使ったり、レストランの顧客を交えた農家ツアーを開催したりすることも計画中。「自然と食の循環」をテーマとする人気店の取り組みに、今後も注目していきたい。

BELLA PORTO

大阪府大阪市北区豊崎3-6-13
TEL.06-6373-1355

http://kimiyu.co.jp/

営業時間:11:30~15:00/17:30~20:00
不定休
ランチ¥2,200〜/ディナー¥4,950〜

※新型コロナウイルス感染症の影響で営業時間が変更になる場合があります。※料金は消費税・サービス料込みです。

3. 生産者と連携して環境問題に取り組むレストラン「御料理 茅乃舎」(福岡)

大きな茅葺屋根の古民家で滋味豊かな和食を楽しめる「御料理 茅乃舎」は、久原本家が2005年に開業した自然食レストラン。この店の顧客から「このだしを家庭でも味わいたい」と声が上がったことに応えて生まれたのが、現在全国にファンをもつ「茅乃舎だし」だ。

日本情緒あふれる古民家の中で楽しめるのは、厳選した旬の食材のよさを添加物を使わずにていねいに生かした、さまざまなコース料理。メイン料理を選べるプリフィックスコースは1名から注文が可能で、¥5,500の1種類。プリフィックスコースのメインとして2名以上から注文できる「十穀鍋」は、ていねいにとられただしの滋味に体が喜ぶ定番。「おまかせコース」や、博多の郷土料理をアレンジした「水炊きコース」なども用意されている。いずれのコースの料理も、ていねいにとっただしのうま味と四季折々の食材の持ち味が、おいしさの決め手だ。

それだけに、料理長は素材選びに真剣。野菜や畜産物は、作り手の顔や思いがわかる、地元生産者のものが中心だ。野菜の生産者は時期によって異なるが、どの生産者も環境に対して真摯な思いをもつ人ばかり。それぞれの方法でフードロス削減や環境問題に取り組んでいるという。たとえば地元の野菜生産者のひとりである「里山サポリ」は、茅乃舎のだし作りの途中でできるカスを、畑の肥料として土に鋤き込んで再利用している。

「御料理 茅乃舎」の茅葺屋根の古民家は、山や川や畑に囲まれ、初夏になると蛍が飛び交う里山にある。桜、新緑、紅葉、雪景色と、四季折々の景色を愛で、自然の息づかいを感じられるロケーションのよさも人気の理由のひとつだ。福岡市内からは車で40分ほど。博多や天神など、車で30分圏内の場所は送迎も可能だ。福岡を訪れる際には、ぜひ足を延ばしてみてほしい。

御料理 茅乃舎

福岡県糟屋郡久山町猪野 字櫛屋395-1
TEL. 092-976-2112

https://www.kayanoya.com/shop/restaurant/

営業時間:11:00~15:30(ラストオーダー13:30)/17:00~22:00(ラストオーダー20:30)
定休日:水曜日(水曜日が祝日の場合はその翌日)
コース料理¥5,500〜

※新型コロナウイルス感染症の影響で営業時間が変更になる場合があります。※料金は消費税・サービス料込みです。

サステナブルなレストランで得られる気づきとは

効率を最優先する産業や農業はこれまで環境にさまざまなダメージを与えてきたが、昨今は消費者の意識の変化に伴い、環境に配慮した生産者やレストランが増えてきた。こうしたサステナブルな取り組みを行うレストランを選んで食事をすることは、フードロス削減や環境問題の解決に確実かつ手軽にアプローチできる選択肢だ。身近なレストランがどのように食材を仕入れて調理・提供しているかを確認し、少しでもサステナブルな意識をもつ店を選び続けることで、明るい未来に向かっていきたい。

Photo: REIKO MASUTANI(Armani Ristorante), Armani Ristorante, Bella Porto, Oryouri Kayanoya

Editor’s Note取材メモ

  • 「アルマーニ / リストランテ」料理長・カルミネ・アマランテ氏が日常生活で大切にしていることは?

    カルミネ・アマランテさんは1990年、ナポリ生まれ。大手町「HEINZ BECK TOKYO」のエグゼクティブシェフとして2018年に来日し、2020年8月から「アルマーニ / リストランテ」の料理長として活躍しています。周囲から「驚くほど仕事人間」と言われる彼が日常生活で大切にしていることは、もちろん(!?)仕事です。「料理人は、好きでないとできない仕事です。料理を始めて15年経ちますが、お客さまに安定した料理を提供するためには常に努力が必要。朝から夜まで失敗しないように頑張ることが大事です。食材の色や食感、おいしさ、味わいを意識しながら、新しい料理を作ることが私の楽しみなんです」

Content Writing

Megumi Komatsu | 小松めぐみ

Food writer

元編集者のフードライター。ライフスタイルマガジンなどでレストランやフード&ドリンクの記事を執筆。万全な体調で外食を楽しむため、普段は医食同源の自炊を心がける。懐石料理の心を学ぶために茶道を習い始めて16年、掛け軸を読むために書道を習い始めて6年……芋づる式に増える趣味と着物が元気の素。