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FOOD

キレイにつながるコーヒーの意外な秘密。その効果とツウが教える楽しみ方

Reported by Miki Numata

2022.7.15

朝のコーヒーやオフィスでのコーヒーブレイクなど、さまざまなシーンで楽しめるコーヒーには、実は意外な美容・健康効果がある。管理栄養士によると、飲むタイミングや量を心得ていれば、いろいろなメリットが期待できるのだとか。毎日のコーヒーライフをもっと自由に楽しむコツを、コーヒー通として知られるフードディレクター、浅本充さんに教えていただいた。

美肌やダイエット効果も? コーヒーがもたらす嬉しい効果

朝に午後に、何気なく飲んでいるコーヒーが美容や健康に良い影響をもたらすとしたら、そんな嬉しいことはない。管理栄養士の吉沼弓美子さんによると、コーヒーには、美肌効果、脂肪燃焼効果、リラックス効果の3つの効果が期待できるのだという。

「コーヒーには強い抗酸化作用があるクロロゲン酸というポリフェノールが多く含まれていて、シミやシワの原因にもなるメラニンの生成を抑制し、美肌とともにアンチエイジング効果ももたらすと考えられています。クロロゲン酸はさらに肝臓の脂質代謝を活発にして脂肪を燃焼し、エネルギー消費量を増加させます。また、みなさんよくご存知のカフェインは、リパーゼという消化酵素を活性化させ、体内に蓄積されている脂肪分を分解してエネルギーとしての消費を促します。この2つの相乗効果は、ダイエットの強い味方ともいえるでしょう。そして、コーヒーのあのかぐわしい香りを嗅ぐことで脳からα波が出てリラックス効果があるといわれます。深煎りの方が香りの効果は高くなりますね」

健康面でも、コーヒーには健康リスクを予防する効果が期待されるという。「クロロゲン酸には血糖値の上昇を抑える効果があるといわれ、国立がん研究センターの研究によると、コーヒーを習慣的に飲む人は全く飲まない人に比べると糖尿病の発症リスクが低いという結果が出ています。また動脈硬化の原因となる悪玉コレステロールの酸化がクロロゲン酸によって抑えられ、動脈硬化の予防効果も。これは心筋梗塞や脳卒中などの予防にもつながります」。ストレスの多い現代、コーヒーのさまざまな効能に期待が高まる。「仕事にも役立ちますよ。カフェインに覚醒作用があるのは周知されていますが、眠気を覚ますだけではなく脳の活性化にも効果があり、集中力アップや効率化も期待できます」

いいことずくめに思えるコーヒーだが、飲むタイミングや量によっても効果は異なるそう。「量については、成人なら1日3〜4杯、カフェイン量で300〜400mgほど。コーヒー100mlあたりのカフェイン量は60mgほどなので、飲む量と照らし合わせて加減してください。飲むタイミングは、脂肪燃焼効果を望むなら食後30分以内、または運動を始める1時間前くらいがよいでしょう。また、コーヒーのカフェインが効き始めるのは摂取後30分ほどなので、短い昼寝の前に飲んでおくとすっきり目覚めてその後の仕事効率が高まるといわれています。アメリカなどでは『コーヒーナップ』と呼んで、昼寝時間を設ける会社もあるようですよ」

100年以上の歴史を経て、日本に根付いたコーヒー文化

「僕にとってコーヒーは日常の一部で、味や香りはもちろん、コーヒーがもたらしてくれる時間や空間が好きなんです」と語るのは、飲食店などのプロデュースを手掛け、コーヒーにも造詣が深いフードディレクターの浅本さん。幼い頃から祖父に連れられて喫茶店に通っていたのだそうだ。「祖父の世代は、戦後に自由貿易が始まってコーヒーが一気に広まった時代。自家焙煎の喫茶店が増えた、いわゆるファーストウェーブの頃です。当時は深煎りが主流でした」

日本にコーヒーが本格的に入ってきたのは明治時代。ヨーロッパから入ってきたカフェ文化をいち早く取り入れた文化人たちの間で、パリのカフェのようなサロン交流が流行したのだという。「そこで飲まれていたのはおそらくエスプレッソタイプ。濃いコーヒーに砂糖とミルクを入れて飲むのが粋だったのでしょうね」

進取の精神に富む日本人は欧米のコーヒー文化を自然に受け入れた。その後、戦争で中断はされたものの、1950年代のファーストウェーブから、スターバックス コーヒー上陸後の1990年代のセカンドウェーブ、そして2010年頃からのサードウェーブと、世界のトレンドに同調しながら独自に発展してきた。

浅本さんの部屋にはコーヒーにまつわるいろいろな「すてき」がたくさん。器もそのひとつだ。旅先やふらりと立ち寄った店で出合った器たちが出番を待っている。

「最近ではシングルオリジンをうたう店も多く、スタンドで気軽に飲めるところも増えました。でも、なんだかんだいって日本人はエスプレッソが好きなんですよね」と、浅本さん。カフェラテやマキアートなど、コーヒーショップの人気メニューはすべてエスプレッソをベースにしている。「実は、エスプレッソこそバリスタの腕の見せどころ。本当においしくいれるためには、毎朝その日のコンディションに合わせてマシンを微調整するなど、見えないところで細やかな仕事をしています。だからおいしいエスプレッソに出合ったらもう、感動ものです」

そのうえ、エスプレッソは意外にもドリップコーヒーよりカフェインが少ないのだそうだ。「苦い=カフェインが多い、と誤解されがちですが、カフェイン量は抽出時間に比例するので、『エクスプレス』で豆とのコンタクトが短いエスプレッソのほうが控えめです」

苦いけれど飲みやすく、負担も少ない。長く愛され続ける理由は、そこにもあるのかもしれない。

仕事柄、自宅でもいろいろなタイプのマシンを使う。「優秀なマシンが増えました。でも僕は、ゆっくり時間をかけていれるドリップが好き。コーヒーをいれる時間もまた、楽しみのひとつです」

自宅でおいしいコーヒーを楽しむには?

カフェやレストランでプロがいれてくれるコーヒーがおいしいのはもちろんだけれど、家でも手軽においしいコーヒーが飲めたら……。浅本さんに、おすすめのコーヒーツールを教えていただいた。

エスプレッソは、
マシンにおまかせ!

プロでも本当においしくいれるのは難しいというエスプレッソだが、家庭でもマシンを使えば本格的な味が楽しめる。「大きく分けて、手間いらずのフルオートタイプと、豆を自分でセットして抽出するセミオートタイプがあります。あとは、直火式に近いツールも便利」。ライフスタイルに合わせて選んで。

おすすめのエスプレッソ
マシン

●ネスプレッソ エッセンサミニ

ポッドで簡単に本格的な味が楽しめるフルオートマシン。「便利で、味のバリエーションも幅広いので、選ぶ楽しみがあります」

ネスプレッソ エッセンサミニ ¥15,180

●ビアレッティ

「イタリアやフランスの家庭には、必ずといっていいほど直火式のエスプレッソメーカーがあります」。定番といわれているのがこちらのビアレッティ。IH式のものも登場。

モカインダクション ¥9,000(参考価格)

●アスカソ

コーヒー通に⼈気という、セミオートマシン。「⾊のバリエーションが多く、⾒た⽬にもかわいいので気分が上がるのでは?」

DREAM ZERO ¥121,000(参考価格)

時間ごと楽しむ
ドリップコーヒー

豆の風味をストレートに味わうドリップコーヒー。ハンドドリップでもマシンでも、ポトポトと液体がゆっくり落ちてゆく景色と香りを楽しめるのが、コーヒー好きにはたまらない。「家にツールがなくても、最近ではドリップバッグが充実しているので、お気に入りの店のものを買ってきていれるのもおすすめです」

おすすめのドリップコーヒーツール

●ケメックス

「ハンドドリップならケメックスがいいですね。僕も使っていますが、スタイリッシュなので置いてあるだけで気分が上がるし、いれるのも簡単。ペーパーが厚めなので深煎り好きには特におすすめです」

CHEMEX® コーヒーメーカー CLASSIC SERIES 6カップ ¥7,300

●HARIO

「HARIOも使いやすいです。手軽なので、初めて買うのにはぴったり」。まずはこれでコーヒーに慣れてから、好みのツールを探しても。

HARIO V60透過ドリッパー02セラミックW ¥2,090

●モカマスター

「最近はコーヒーメーカーもいろいろなものがありますが、僕はこれが気に入っています」と教えてくれたのは、モカマスターのコーヒーメーカー。「4色あるのでインテリアに合わせて選ぶといいですね」

モカマスター KBG SELECT ¥59,950

●バルミューダ

2021年に発売されたバルミューダのコーヒーメーカーが気になっているという浅本さん。「デザインも機能も良さそうで、一度使ってみたいと思っているマシンです」

BALMUDA The Brew ¥59,400

今やコーヒーは、すっかり日本人の生活の一部となっている。豆の種類や焙煎方法、挽き方やいれ方で味も香りも豊かに変化する飲み物は、その日の気分や体調に寄り添いながら日々を彩ってくれる素敵なパートナーだ。

そんなコーヒーと、うまく付き合う方法って?

「難しいことは全くないですね、好きなときに好きなように」と、浅本さんは軽々と言うけれど……。「僕の場合は、時間にゆとりがあるときや、何かにじっくり向き合いたい気分のときには丁寧に豆を挽いてハンドドリップで時間をかけていれます。そして、スイッチを切り替えたいとき、たとえばひとつの仕事が終わって次の仕事に移るときなどは、エスプレッソでリセット&リスタート。そんなふうに使い分けたら、きっとコーヒーがもっと楽しくなると思いますよ」

何気なく飲んでいるコーヒーも、飲むタイミングやいれ方しだいで、健康効果やリラックス効果、そして何より“幸せ効果”をもたらしてくれる心強い味方に。

この素敵な飲み物と、もっと仲良くなってみてはいかが?

Makoto Asamoto | 浅本 充

株式会社ユニテ代表、フードディレクター

国内のフレンチレストランでサービスとソムリエ、マネージャーとして働いたのち、2008年にブルックリンへ。帰国後2009年に会社を設立し、アパレルブランドのカフェなど、食まわりのコンサルティングや開発に携わる。

Photo: Yukako Hiramatsu

Content Writing

Miki Numata | 沼田美樹

Editor&Writer

広告制作会社、アートギャラリー、出版社で勤務した後、フランスの美術センターにてキュレーターのインターンを経験。帰国後、美術雑誌、インテリア雑誌、グルメ雑誌、グルメサイトの編集を経て独立。食とライフスタイルを中心に編集、執筆を行う。趣味はお菓子作りとトイレのサインコレクション。