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WELLNESS

改めて考えたい、VIOのケアって本当に必要ですか?

Reported by YUMIKO MURATA

2022.1.17

女性が自分の体を知って、一生にわたって快適に過ごすための「フェムテック(Female×Technology)」。世界的に盛り上がり、日本でもここ1~2年でフェムテックまわりの製品やサービスが格段に増えてきている。これまではなかなか人に聞けない、タブーとされていたことも少しずつオープンになり、自分の悩みを話して解決に向けるような環境も整いつつある。だが、意外にも積極的なのは若い世代で、30代~40代以降は、「必要ない」と思う女性も多いというのが現実。今一度、デリケートゾーンのケアの必要性や効果について、日本で初めてデリケートゾーン専門ケアサロンを立ち上げた得田由美子さんにお話を伺った。

今、世界中で「フェムテック」が話題になっている。この10年で何が変わった?

得田さんが妹さんとふたりでアンダーヘア専門ブラジリアンワックス脱毛サロン「ピュビケアサロン白金台」をオープンさせたのは、2010年のこと。当時は「え? 何のために?」とまわりから驚かれるばかりだったという。

もともと得田さんはファッションエディターとして、妹さんはコンサルタントとして、海外を飛び回っていた姉妹。少し前だが人気の海外ドラマ『SEX and the CITY』でブラジリアンワックスが話題となり、海外、特にNYなどではデート前にアンダーヘアのお手入れをするのが浸透しつつあった。

「海外では当たり前のケアが、日本ではできる場所がない……そう思って、妹とサロンを立ち上げることにしたんです。ちょうどまわりでもやりたがる人が出てきた、というのも大きかった」

ただ、当時はあくまでもファッション目的。Vラインのデザインを選べるなど、恋愛向けの美容だったと振り返る。

「それがサロンを経営して多くの女性をケアし続けている間に、ブラジリアンワックスはファッションではなく、“女性の健康に直結する大切なケア”という考えに完全に変わりました。世間の価値観もこの10年間で大きく変化してきています」

少しずつ変わってきたな……と感じたのは、3~4年ほど前のこと。「『デリゾ』(デリケートゾーンの略語)というワードが出てきて、介護を意識した方たちが、VIOラインの脱毛に注目し始めました。圧倒的に排泄のケアが楽になるんです」

アメリカから始まった#MeToo運動の影響力や、LGBTに対する理解の普及も大きく、デリケートゾーンのケアは特に若い世代に影響を与えた。「これまで“見ザル”“言わザル”“聞かザル”の完全タブーだった話が、メディアでも特集を組まれるようになり、一人で悩まずに人に聞ける環境が整ってきました。生理貧困や環境問題に向けて吸水ショーツが飛躍的に普及したのも大きいと思います」。吸水ショーツに関しては今やファストファッションブランドも参入、デリケートゾーン用のコスメも圧倒的に増え、オーガニックブランドだけではなく、いわゆる化粧品ブランドからも発売されるように。

そもそもデリケートゾーンは、なぜケアが必要?

「ヘアがその場所の機能を守っているから、デリケートゾーンも脱毛しないほうがよいのでは? という質問をよく受けます。確かに100年以上前の下着をつけていなかった時代はそうでした。でも今はきちんと下着をつけて守られているので、ヘアがなくても大丈夫なんです。むしろおりものシートやナプキンなど密封性の高い製品でムレやすく、また長時間座っている現代のライフスタイルでは熱がこもりやすくなる。生理中に“かえし”を挟んでいた昭和初期までの時代とは、悩みやトラブルの種類が変わってきています」

ヘアに経血がついてゴワゴワになることで、摩擦かぶれやかゆみなどのトラブルを起こしたり、おりものや尿が付着して匂いが強くなることも……。

「基本的にIOラインは脱毛をしたほうが物理的に清潔を保ちやすく、圧倒的に快適です。またヘアがあると皮膚の乾燥や、子宮まわりのトラブルにも気づきにくくなります」

実際に一度施術を受けると、生理や子宮のコンディションの変化にも気づきやすくなり、デリケートゾーンの皮膚への意識も変わってくる人がほとんどだという。

まず行いたいのは、脱毛。おすすめはブラジリアンワックス

「先ほども言ったとおり、清潔を保ってトラブルを防ぎ、自分のコンディションに敏感になるためにもIOラインの脱毛はぜひとも行ってほしいです。Vラインに関しては温泉に行ったときなど、人の目が気になるなら残したり、デザインで遊ぶのもありでしょう」

脱毛の手段は、主にワックスと光脱毛があるが、その違いは何だろうか。

「ワックスは、毛根から抜くので角質も取れて肌がシルキーに。1本単位でデザインできるので例えるのなら“ガーデニング”。一方、光脱毛はパワーが強いので“除草剤”のように絶やしていくイメージ。ですが事前に剃毛しなくてはならず、デリケートな部分ですので少し不安に感じる人もいるでしょう。また黒い毛に反応するので、白髪になった陰毛には効きません。仕上がりもワックスのようにつるんとはせず、毛が少し残るのでザラザラ。心地よく、ケア意欲もわくのはブラジリアンワックスでしょう」

「ピュビケアサロン白金台」で使用しているワックスは、オースートラリア産のほぼオーガニックのもの。毛の太さに合わせて2種類を使い分けている。

ちなみに「ピュビケアサロン白金台」では、ブラジリアンワックスとフラッシュ脱毛を組み合わせた「ハイブリッド脱毛」というメニューが人気。ワックスのあとにブラッシュを当てることで、次に生えてくる毛に対しての抑毛効果が期待できることで、減毛のスピードもアップするという。

奥に見える黒い機械がフラッシュ脱毛用のマシン。イタリアの医療用レーザーメーカーDEKA社の美容脱毛器を使用。
サロン内はとても清潔な雰囲気。スタッフの技術もすばらしく、痛くないように工夫をしてくれる。緊張してしまう……という初めての人でも、リラックスして施術を受けられる。「ピュビケアサロン白金台」ピュビケア3ゾーンブラジリアンワックス ¥8,800、ハイブリッド脱毛セット(3ゾーンブラジリアンワックス+VIフラッシュ脱毛) ¥15,500

洗いすぎはNG、乾燥もNG。専用のアイテムでスキンケアを

さらに他のボディの肌と同じように、洗浄と保湿にも気を付けてほしい、と得田さん。

「ボディシャンプーがだめということではありませんが、デリケートゾーンは他の肌とpH値が異なるので、洗いすぎる可能性があります。するとバリア機能が落ちてしまい、ヒリヒリしたり、抵抗力が弱まってしまうことも。できるだけ専用の洗浄アイテムを使用することをおすすめします」

顔の肌と同様に保湿はマスト。「しているのとしていないのでは、肌の見た目年齢が10歳くらい変わってきます。やはり専用の保湿アイテムを使用しましょう」

髪はヘアシャンプーとコンディショナー、顔はフェイスウォッシュとフェイスケアアイテム、体はボディシャンプーとボディクリーム……とパーツによって専用アイテムを使用するように、デリケートゾーンは構造に合った専用のアイテムでのケアが必要ということだ。

「少し前までは、デリケートゾーンのことを『アソコ』と呼ぶ人が多かったと思います。自分の一部分なのに『アソコ』って他人事ですよね? 他の肌と同様にスキンケアもしてあげることが、自分自身を大切にすることにつながると思うんです」

デリケートゾーンのケアによって、QOLがぐっと上がる!

「柔軟で合理的な考え方をしている若い世代からフェムテックが盛り上がってきていますが、すべての世代にも徐々に広がりを見せています。先日は、毛深くて部活動の際に匂いが気になるという高校生をお母さまがサロンにつれてきてくれました」

海外、特にブラジルでは、母親が娘のアンダーヘアのケアをお手製のワックスでする習慣があるそうだ。それがブラジリアンワックスの名前の由来になり、NYから世界中に渡った。

「なかなか話せなかった悩みを母親に相談し、そして母親が解決してくれた。時代が変わってきていると実感しています。ケアのおかげでお嬢さんは部活動にもアクティブに取り組めているそうです」

デリケートゾーンのケアを始めることによって、婦人科にもためらいなく行けるようになった人も多い。「内膜症や筋腫が増えているなか、毎日デリケートゾーンをケアすることで、ちょっとした変化に気づき、それが病気の早期発見にもつながっています。またこれまで人に相談できなかった異形成についても話しやすい環境になってきました。何よりみなさん、自宅にハウスクリーニングを入れて水回りをきれいにしたときのような爽快感をご自分の体で感じています。先ほどの女子高校生もですが、明らかにQOLが上がっている方が多いですね」

子宮まわりをパワースポットとして捉えている女性も多い。自分の中のパワースポットを清潔に保ち、慈しみながらケアをすることは、毎日心地よく過ごせるだけではなく、自分自身を大切にしていると実感できること。それが自信につながり、ポジティブなマインドやアクティブな毎日につながっていくのは確かなことだ。

YUMIKO TOKUDA | 得田由美子

Pubicare Salon Representative

「ピュビケアサロン白金台」代表。モード誌編集長を経て、2009年に日本で初めてのデリケートゾーンである本サロンを妹の美奈子さんといっしょに立ち上げる。その後、オーガニックにこだわったデリケートゾーン用オーガニックスキンケアをプロデュース。婦人科系疾患や予防性教育などの問題にも取り組むピュビケアジャーナリストとしても活躍中。

Photo: HISAI KOBAYASHI

Editor’s Note取材メモ

  • 婦人科系からのアプローチで健康・美容の底上げ

    サロンではプレ更年期から更年期、老年期にかけて婦人科のドクターや鍼灸師をライフパートナーに持つことをすすめているという得田さん。ご自身も更年期になり始めてから「アーユルヴェーダ鍼灸」を毎月受けるように。
    「自分自身で体の声やサインを気にかけることが大前提ですが、第三者のチェックを受けることも必要です。私は毎月鍼灸で瘀血(おけつ)の状態や全身のチェックをしていただき、体のコンディションの底上げをするようにしています。定期的にヘルスチェックをすることで体調の異変にも気づきやすくなりますし、日々の生活の見直しもできます」
    さらに更年期以降にリスクが高まる骨粗しょう症対策もスタート。「運動はもちろんですが、ヘッドマッサージもするようにしています。頭蓋骨を鍛えるにはヘッドマッサージの刺激がいいそうで、頭皮の血流循環も良くなり、年齢からくる抜け毛の対策もできて一石二鳥です」

Content Writing

Yumiko Murata | 村田由美子

Beauty Editor

元『ELLE』ビューティ ディレクター。ファッション誌のビューティ担当を20年以上続け、フリーランスに。『エル・ジャポン』『エル・オンライン』のほか美容誌などでも執筆。食べることと赤ワイン、南の島をこよなく愛し、美容に悪いと思いつつもバカンスでは太陽をたっぷり浴びている(その分ケアもしっかりしています笑)。趣味はダイエットと歌うこと。