WELLNESS
暑いのに体は冷えている⁉
その体の不調の正体は“夏冷え”にあった
Reported by Yuumi Fujii<dis-moi>
2021.7.15
外は蒸し暑いのに、一歩室内に入れば寒すぎる! すっかり当たり前となってしまったこの環境下において、暑いはずなのに寒さや冷えから体の不調を感じる人が増えている。そこで、漢方医学、自然療法、食事療法などさまざまなアプローチで、数々の病気の治療にあたり、“温めドクター”としてメディアで活躍する、イシハラクリニック副院長の石原新菜先生に夏の冷えの特徴と、その解決法を教えていただいた。
夏冷え=内臓冷えが全身の不調を招いていた
「以前いわれていた夏バテは、暑くて食事が摂れない、眠れないというものでしたが、今はそうではなく、明らかに冷えが不調の原因に」と、開口一番に語り始めた石原先生。
「冬は寒さを感じれば上着を着たり、温かいものを食べたり飲んだりして体を温めようとします。しかし夏は、外気温が暑いので薄着になるし、冷たいものを摂る機会が増え、体を冷やそうとします。これ自体は自然なことではありますが、問題は室外と室内の寒暖差。現代において冷房は快適さを保つうえで欠かせないものですが、室外と同じ感覚のまま室内で過ごすと体の内側から冷え、さまざまな不調を引き起こします」
確かにオフィスビルや商業施設の冷房は強く、冷やしすぎを感じることは多々ある。しかし深刻なのは、体感の寒さではなく、気づかないうちに蓄積する体の内側の冷えだと、石原先生は警告する。
「冬の冷えと違い、夏の冷えは“内臓冷え”のことを指します。内臓が冷えてしまうと体に栄養や酸素を運び、不要物を回収する血液循環が悪くなるため、消化力や吸収力も落ち、人によって胃もたれ、胃痛、便秘や下痢、むくみ、生理痛などの症状が出てきます」
イシハラクリニックには、こうした夏特有の調子の悪さを訴える人が年々増加しているそう。さらに、内臓冷えで注意をしなければいけないのが、メンタルにまで影響を及ぼすということ。
「室内外の大きな寒暖差によって自律神経は乱れやすくなるうえ、内臓冷えによって体の巡りが悪くなり、不眠や気分の落ち込み、やる気が出ないなど、メンタルバランスを崩しやすくなります」
[チェックポイント]こんな症状があったら夏冷えのサイン
- □ 頭痛や肩こりがつらい
- □ 便秘や下痢をするようになった
- □ よく眠れない
- □ 手足が冷え、むくみが出る
- □ やる気が出ない
- □ 肌荒れやくすみが気になる
- □ 生理痛がひどくなった
夏冷えは普段の生活の見直しで解消できる
「昨今は、リモートワークの影響で運動量がこれまで以上に減り、筋肉量が落ちてしまったために熱量もダウン。より深刻な夏冷えを感じる人が増えています。しかし、“冷やさない生活”を意識するだけでずいぶんと夏冷えは解消できるんですよ」
まずは夏冷えを引き起こすライフスタイルをチェック。それぞれの対応法を教えてもらった。
[チェックポイント]あなたは大丈夫? 夏冷えを引き起こすライフスタイル
- □ 食欲がなくても3食を食べるようにしている
- □ アイスコーヒーやジュースを飲む回数が増えた
- □ 夜寝るときの冷房はタイマーをセットしている
- □ 寝る直前までスマホやタブレットが手放せない
- □ 室内外とも裸足で過ごすことが多い
- □ 夏はシャワーで済ませがち
- □ 汗をあまりかかない
- □ 運動をしていない
- □ ダラダラと仕事をしてしまう
- □ トイレの回数が少ない
【食事編】
薬味、スパイスを活用して体を冷やさない
「温かい食事を摂るのが理想ではありますが、暑い夏はそうも言っていられないのが現実。こんなとき積極的に活用してほしいのが薬味やスパイス。これらは胃腸の働きを整え、消化吸収力を高めたり、血流を良くする働きもあるので、内臓冷え解消にはもってこい。そうめんや冷やしうどんなどをいただくときは、ねぎや生姜などを添えて。これ以外にも、玉ねぎやみょうが、にんにく、ゆずなど薬味をお料理と一緒に摂るようしてください。
夏になると回数が増えるコーヒーなど飲料。「薬膳の考えではコーヒーは“陰”で体を冷やすもの。逆に、紅茶やココアは“陽”で体を温める食材のため、たとえ冷たくして飲んでも大丈夫です。もし、コーヒーを飲む際は、シナモンパウダーを振るなど、スパイスを利用するといいでしょう」
また、3食きちんと食べなければいけないと思っている人もいるはず。
「現代は飽食の時代ですし、動きも少なくなっているのであれば、3日ほどは食べなくても平気なくらい。だから、食欲がなければ内臓機能が低下し、消化吸収力も落ちているサインなので、1~2食抜いても問題ありません。ただそれが続くようなら、朝食をアミノ酸やビタミンがバランスよく摂れる味噌汁や、麹で発酵させた甘酒などに替えるのもおすすめです」
【運動編】
一日30回のスクワットで熱が作れる体に
リモートワークにより通勤時間がなくなり、座っていることがこれまで以上に増えている今、運動不足を切実に感じる人は多い。
「通勤をはじめ、オフィスに行かなくなり、オンオフのスイッチがなくなって、ダラダラと過ごしてしまう人も増えています。だからこそ、休憩や仕事終わりの時間など、区切りをつけることが大切。このとき、30分ほどのウォーキングなどをスケジューリングするのもいいですね。
全身の機能向上を考えたら汗をかくレベルの有酸素運動がベストですが、座りっぱなしで動きが少ない人はスクワットがおすすめ。太ももとヒップにある大きな筋肉を鍛えることで効率的に運動効果を得られます。10回を1セットにして、一日3セットを目安に行うようにしてください」
【入浴編】
じんわりと発汗させて全身の巡りを高める
「暑い夏はシャワーだけにしがちですが、シャワーだけだと体の芯から温まりませんので、必ず湯船に浸かるようにしてください。一般的に湯温は38~39℃が理想といわれていますが、体を温めるのが目的ですから、自分が温かいと感じ、じんわりと汗ばむくらいがベスト。さらに、入浴前にしょうが紅茶など温め系のドリンクを飲んだり、入浴剤を活用したりすると発汗作用も高まります。
近年は、運動量の低下、ストレスで不眠を訴える方が増えていますが、お風呂は体を温めるだけでなく、入眠効果も高めるので、眠りの質を高めるためにもぜひ習慣にしてください」
【ライフスタイル編】
室外は夏、室内は秋冬と思って対策を
「今は室内外との寒暖差が大きいので、夏とひとくくりにせず、室外では夏、室内や寝るときは秋冬だと思って対応することが大切です。室外では暑いので熱中症対策のために、ワンピースを着たり、髪が長い人は結んで首を出すなどして風が通るようにすると、体にこもった熱が放散できます。もちろん、体が求めるなら冷たい飲料を飲んでもOKです。
一方室内では、カーディガンやストールを常備し、体が冷えないように。特に冷気は下にたまるので、靴下などで体が冷えないよう対策してください。
また、睡眠時に冷房をタイマーセットにする人も多いかと思いますが、睡眠中に暑くて目が覚めてしまうことも。これを繰り返すと、たとえ睡眠時間が確保できていても、睡眠の質が低下してしまいます。寝る際の冷房は、やや高めの温度設定にし、後はパジャマや掛布団など、寝具で温度を調整してください」
温めアイテムを味方に、夏冷えに負けない体へ
一朝一夕にはいかない夏冷え対策だからこそ、手軽に、そして効果的なアイテムがあれば温活ケアも続けやすくなるもの! そこで、石原先生の生姜パウダーに加え、温めアイテムを編集部がセレクト。
石原先生もおすすめ!
手軽にプラスできる生姜パウダー
「生姜に含まれているジンゲロールは、熱を加えることでショウガオールとなり、血流を高め、体を芯から温めてくれる効果があります。今は、加熱した生姜パウダーが簡単に手に入りますので、お茶をいただくときや料理にこれらを活用すると手軽に体を温められます」
世界的に注目される天然発酵紅茶「KOMBUCHA」
紅茶や緑茶に「スコビー(SCOBY)」と呼ばれる酢酸菌や酵母菌の菌株と砂糖を混ぜた発酵飲料は、腸内環境を整えるなどの健康効果が期待できると欧米で大人気。勝山ネクステージのKOMBUCHAは、純粋なコンブチャだけを便利な粉末・スティックタイプに。お湯かお好きな飲み物に溶かすだけでOKの手軽さ。夏の水分補給にぴったり!
中性重炭酸入浴剤で発汗できる体へ
せっかく入浴するのなら、温浴効果を高める入浴剤を。BARTHの中性重炭酸入浴剤は、独自の製造技術によりお湯を中性にすることで、炭酸ガスから発生した重炭酸イオンがしっかりと湯中に溶け込みやすくなる。さらに、重曹とクエン酸配合で、毛穴までキレイに。
血流を促す“一般医療機器”の疲労回復ウエア
ただ着るだけで筋肉の緊張をほぐし、血流を促して疲労回復を図るリカバリーウエア。「リフランス」は、シリカやトルマリンなど数種類の天然鉱石の混合体「プラウシオン®」を含浸した特殊な繊維や生地を使用。体温の放射により、鉱石が発する遠赤外線が副交感神経に働きかけ、疲労回復を図り、安眠に誘う。
体を温めて、心も体も元気に過酷な夏を乗り切ろう
近年は、快適なシーズンが少なく、春のあといきなり暑くなるため、これに体が順応できず、夏冷えに陥る人が増えている。何より夏冷えが怖いのは、寒さを感じていなくてもじわじわと体の内側が冷えていき、さまざまな不調を引き起こしているという事実。食欲がわかない、眠れない、やる気が出ない、肌荒れする……などあったら、まずは夏冷えを疑い、冷えから体を守る生活にシフトしてみよう。
Niina Ishihara | 石原新菜
Physician
医師・イシハラクリニック副院長。ヒポクラティック・サナトリウム副施設長。1980年、長崎県生まれ。小学2年生までスイスで過ごし、その後、高校卒業まで静岡県伊東市で育つ。2006年3月帝京大学医学部卒業後、同大学病院の研修医となる。父・石原結實のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、さまざまな病気の治療にあたっている。女性視点を生かした女子の健康問題のわかりやすい医学解説と、親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。著書は多数あり、韓国、香港、台湾、ベトナムでも翻訳され出版されている。日本内科学会会員。日本東洋医学会会員。日本温泉気候物理医学会会員。2児の母。
Photo:Tetsuo Kitagawa
Editor’s Note取材メモ
-
この夏は、偶然見つけた伊豆の飛び込みスポットで思いっきりダイブしたい!
石原先生にこの夏楽しみにしている予定を伺ったところ、「静岡県の伊豆高原に当院が設立した保養所(サナトリウム)『ヒポクラティック・サナトリウム』があります。夏の時期は子どもたちと共にこの地を訪れるのですが、昨年、ここから車で15分ほど行ったところに、とても美しい小さな海の飛び込みスポットを次女と発見! シュノーケリングができるほど澄み渡った海へ、思いっきりダイブする楽しさといったら!」と、満面の笑顔に。「今年は、昨年受験で一緒に行けなかった長女と共に楽しみたいです」
Content Writing
Yuumi Fujii | 藤井優美
Beauty Editor
『ELLE』『Women’s Health』などの雑誌・WEBメディアでも執筆。美容系編集プロダクション「dis-moi(ディ・モア)」主宰。エステティシャンを経て、美容エディターになること25年以上。美容専門誌をはじめ、多くの女性誌で美容情報や女性のヘルス特集を手掛ける。年間、数多くの研究者、医師、美容家などの取材をこなす。