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WELLNESS

眠りはヘルス&ビューティの源。
質の高い“眠り”を育むTo Doリスト

Reported by Mika Hatanaka

2021.6.14

ライフスタイルの変化はもちろん、目まぐるしく変わりゆく世の中に、心が休まらない日々も多いのでは? また、寝苦しい気候になりやすい時期に突入した今、皆さんは、きちんと眠れているだろうか。眠りが私たちの生活に欠かせないことはわかっているけれど、実際にはどんな状態が理想の眠り?――そんな睡眠にまつわる素朴な疑問を、睡眠研究家であり、寝具の老舗メーカー・昭和西川の副社長でもある西川ユカコさんに話を伺った。心身ともに健康でいるための眠りを身につければ、毎日のパフォーマンスや幸福度が飛躍的に高まるに違いない。

睡眠の質が二極化している日本人
科学的にも睡眠の効果は絶大

「日本人は先進国のなかでも睡眠不足と言われているんです」と教えてくださった西川さん。

「実際に、2019年の調査ではOECD加盟国のうち、睡眠時間がワースト1位というデータが出されています。睡眠はストレスを減らす効果があるというのは、科学的にも証明されている事実ですから、睡眠時間の少ない日本人はストレス過多になりやすいというのは簡単に想像できますよね。それに、このコロナ禍でのライフスタイルの変化をポジティブに捉えられるか、ネガティブに捉えるかという部分でも睡眠の質が二極化しているとも言われているんです。生活の変化をポジティブに捉えられる人はたっぷり眠ることができ、それによりポジティブな思考につながる。一方、ライフスタイルの変化をネガティブに捉えてしまっている人は、不安で眠れない傾向にあり、それがさらなる不安を生み出す原因になる……という仕組みですね」

単純に“睡眠不足”という言葉だけでは片付けられないのが、昨今の私たちの睡眠事情だとか。もっと高い意識で眠りと向き合ったほうがよさそうだ。

この春、東京・日本橋浜町にオープンしたのが、「MuAtsu Sleep Lab.」。昭和西川のムアツプラス シリーズを体感しつつ、睡眠についてカウンセリングしてもらえる空間だ。スリープスタイリストによるカウンセリングのほか、西川さんによるコンサルティングメニューも。

美肌や代謝アップはもちろん
“自分らしく”いるためにも睡眠は重要

それでは、実際に睡眠時間の理想と、眠ることで得られるメリットとは何があるのだろう。

「一般的に成人では7〜9時間が理想の睡眠時間と言われています。日本人は6時間未満という人が本当に多いんですよね。とはいえ、10時間以上寝るのも脳や体には悪影響を与えると言われています。寝ている間に私たちの体は成長ホルモンを分泌しているので、睡眠時間が足りないと肌や体の代謝活動が鈍り、美容面でいえば、肌のハリやツヤの低下へとつながります。さらに、しっかり眠れないと交感神経が休まらず、血流が悪くなるので肌のくすみの原因にもなるのです」

また、睡眠不足による大きな弊害が、脳へのダメージだとか。

「睡眠が不足すると前頭葉がダメージを受けてしまいます。前頭葉は、脳のなかでも判断力や感情をコントロールする役割を担っているので、睡眠不足が続くと判断力が鈍ったり、空気を読めなくなったりしてきます。ビジネス的な観点からパフォーマンス力が落ちるのはもちろん、人とのコミュニケーションなど社会で生きていくためのスキルに悪影響が出てきてしまい、“自分が自分でいられない”――そんな状況も睡眠不足は招いてしまうんです」

スリープスタイリストによるカウンセリングは、30分、45分、60分の3コースより。寝具の相談や睡眠改善のためのコンサルティングなどを、ゆったりとした空間で受けられる。要予約
https://muatsuplus.com/pages/reservation
MuAtsu Sleep Lab. 東京都中央区日本橋浜町1-4-15 営業時間11:00〜18:00 月曜定休  ☎ 03-3861-4115

週末の寝だめはNG!
質のいい睡眠を誘う生活習慣

では、実際に良質な睡眠とはどういう状態なのだろう。

「朝起きて、疲れが取れている・気分がいい・日中眠くならない――まずはこの3つをポイントにご自身の睡眠をチェックしてみてください。起きたときに体が痛かったり、すっきり起きられなかったり、不安や不快な気持ちで目覚めるのは、よく眠れていない証しです。睡眠の質は日中にどのように過ごしたか、複合的な要因によって左右されるので、“眠る”という行為だけでなく、日中の行動や生活習慣の見直しのチャンスだと思って取り組んでみてください」

良質な眠りへと誘うための、日中の生活で気をつけたい4つの習慣について伺った。ぜひ今日からチェックしてみよう。

1.太陽の光を浴びる

太陽の光を浴びると、精神を安定させる働きがあるというセロトニンの分泌が促される。セロトニンは夕方になると、睡眠を促すメラトニンに変化する。メラトニンは年齢とともに生成が減っていく物質。良質な眠りをサポートするためにも、1回5~30分太陽の光を浴びることを、1日2〜3回行うのがおすすめ。

2.夜は間接照明などダウンライトに

一般的な家庭の照明は200〜500ルクス程度。ところが200ルクス程度の明かりでも、メラトニンの分泌量が減り、眠りの質が下がると言われている。日が落ちてからは、間接照明などを有効活用して、メラトニンが分泌されやすい環境づくりをしよう。

3.夕食は眠る2〜3時間前に、お風呂は眠る1〜1.5時間前に

質のいい眠りのためには、体温が下がってくるタイミングで入眠するのが理想。夕食後は、体は消化活動をするため体温が上がるもの。落ち着くまでには2〜3時間はかかると覚えておこう。また、お風呂については、38〜40℃の湯温の場合は、体温が下がるのに1〜1.5時間、42℃以上の熱いお風呂の場合には、3時間程度体温が下がるのに時間を要するとか。

4.平日・週末、関係なく起きる時間を一定に

週末に寝だめをするという人もいるかもしれないが、起床時間の大幅なズレは、自ら時差ボケを引き起こしているのと同じこと! 寝だめなどにより狂った体内時計は、正常な状態に戻るのに数日要してしまうとか。6時起床が平日のスタンダードなら、週末は遅くとも8時までには起きるなど、起床時間の誤差は2時間以内にとどめよう。

寝具は寝ている体をサポートしてくれるもの
寝返りをスムーズに打てるものを

「今、ご紹介したような生活習慣には、努力が必要です。忙しい現代人だからこそ、寝具を上手に取り入れて、その努力をうまくサポートしていただけたらなと思うんです」と西川さん。

生活習慣は、良い眠りにつくために努力すべき体づくりのひとつである一方、寝具は、質のいい睡眠が手に入る“道具”だと言う。

「寝具を選ぶときには、寝返りをスムーズにできること、寝ている間も正しい姿勢でいられるようにサポートしてくれることにフォーカスするのが大切です。寝姿勢の理想は、壁に背面をつけたときと同じように、まっすぐの姿勢でいること。そして、ひと晩で20〜30回行う寝返りをスムーズに打てるようサポートするために弾力性の高いものを選ぶのがおすすめです。また、寝ているときに体が“面”で圧迫されると毛細血管の血行が滞ってしまいがちで、背中が痛くなったり眠りが浅くなったりすることにもつながるので、マットレスを選ぶときには、“点”で支えてくれるものを選ぶことも大切ですね」

昭和西川の「ムアツプラス」は、点で体を支えることで寝ている間の寝返りをサポートしてくれる設計。血行に見立てたシートを当ててみると、圧は点状にしかかからないため、体で考えてみると血液の流れがスムーズなことがよくわかる。実際に寝ころがってみると、体が包まれるような安定感と寝返りのしやすさが。
MuAtsu Sleep Lab.の「ボディフィッティングシステム」では、体形や重心位置を計測し、8種類の固さから体にあった最適な寝姿勢のマットレスを提案してもらえる。【MATTRESS】MuAtsu 2Form Soft ¥44,000〜
ベッド用のマットレスは、一度寝てみると他のマットレスでは眠れないという声も。体全体が包み込まれるような安心感は格別。【BED MATTRESS】MuAtsu Bed Mattress Standard ¥220,000〜

寝返りを妨げないという点からみると、意外と見落としがちなのが、掛け布団だとか!

「軽いものがいいというのは一般的に言われていることですが、実は寝返りがスムーズに打てるという意味では、体をドーム状に包み込んでくれる羽毛布団が通年を通しておすすめなんです。夏場はタオルケットなどを活用される方も多いと思いますが、薄手のものは、実際は寝ている間に体にまとわりついてしまい、寝返りを妨げてしまうということも……。私自身も夏場は薄手のものにするなどして、年間を通じて羽毛布団を愛用しています」

羽毛掛け布団もさまざまな厚さがラインナップ。【羽毛掛けふとん】 BASIC シングルサイズ ¥110,000〜
枕の種類はComfort Bounce(高弾性)とComfort Breeze(高通気)がラインアップ。枕の高さはHighとLowの2タイプから選べ、さらに2段階の高さ調節が可能。【PILLOW】MuAtsu Pillow Comfort Bounce(高弾性)/Comfort Breeze(高通気)各¥16,500

寝具=道具という観点から考えてみると、忙しい現代人こそ、上手に眠れるためのツールを整えていくことが、体と心のヘルスケアにとって効率のいい選択になるのではないだろうか。1日の3分の1の時間を費やす“睡眠”だからこそ、もっと多角的に考えていきたいと感じた。

Yukako Nishikawa|西川ユカコ

Sleep Researcher

大学卒業後、編集者として10年間勤務したのち、家業である昭和西川の代表取締役副社長に。睡眠改善インストラクター、セロトニントレーナーおよび、温泉入浴指導員として「ミス日本」ファイナリスト勉強会などで睡眠指導を務めるほか、講演や各種メディアで活躍。今年、著書「最強の睡眠(SBクリエイティブ)」が中国や韓国などアジア各国で翻訳出版予定。

Photo: Tetsuo Kitagawa
Hair&Make: Nozomi Fujimoto (cheek one)

Editor’s Note取材メモ

  • 時短や効率ばかりにとらわれず時には素材そのものを楽しむ丁寧さも

    西川さんが最近ハマっているというのが、生花の状態から入れるカモミールティー。ティーバッグなど効率のいい製品を選びがちだが、効率や時短という言葉からは一旦距離を置き、ゆっくりと素材を丁寧に扱う時間の大切さや、その時間も含めて味わうことの豊かさを改めて感じたという。「料理ひとつとっても、だしパックやインスタントなどに頼ってしまいがちですが、暮らしの中で何かひとつでも、丁寧にゆっくり味わう時間を大切にしたいなと、時間との向き合い方を見直すきっかけになっています」

Content Writing

Mika Hatanaka | 畑中美香

Beauty Writer

『25ans』などの雑誌・WEBメディアでも執筆。ファッション誌のビューティ担当を経てフリーランスに。ビューティ&ヘルスを中心に、雑誌や広告のほか、書籍のディレクション&ライティングも。旅とビストロ、占い、カフェでボーっとすることが欠かせない。赤リップとその日の気分に合った精油が必須アイテム。