TRAVEL
非日常を体験できる、大人の温泉リゾート
Reported by Chieko Koseki
2021.12.15
2022年は、少しは旅行に行きやすくなりそうな予感。久しぶりのお出かけだから、いつもより贅沢に。そして人混みとは無縁の、小さな隠れ家的温泉リゾートを選びたい。マイクロツーリズムが注目される今だから、都市部(関東、中部、関西)から2〜3時間で行けることも大切。そんな条件をもとに10軒の温泉リゾートを厳選。おすすめの過ごし方もご提案。温泉にゆっくり漬かり、英気を養えば、来る一年もがんばれそう!
50室以下、露天温泉付き。密を避けるなら、高級温泉宿が正解
旅行者が徐々に観光地へ戻ってきているという昨今。そろそろ旅へ出たい気分になってきているのでは? 湯けむり漂う温泉に、冬の美食、どちらも今の季節ならではのお楽しみ。けれど、まだ人混みは避けたいのが正直なところ。
誰もがそう思うようで、コロナ禍前とは旅行者の志向も、変わってきている。たとえば、できるだけプライベートな空間を求めて、客室数の少ない宿や、離れの客室をチョイス。食事も部屋食が好まれているそう。
そこで、ここでは客室数が50室以下(ほとんどが20室以下)の、隠れ家的な温泉宿をセレクト。部屋数が少ない上にラグジュアリーな分、サービスが手厚いのも魅力だ。そして、すべて天然温泉付き。しかもほとんどの客室に露天風呂がしつらえてある。まさに温泉三昧の休日に。
また、良質な温泉であるだけでなく、個性が際立っているのも特徴。贅(ぜい)を尽くした美食や、リノベーションをほどこした古民家、五感を刺激するアートなど、プラスアルファの魅力を備えている。
都市部から3時間内で行ける温泉リゾートなので、気軽に訪れることができるのもポイント。一度といわず、二度三度とリピートしたくなるお気に入りの宿が見つかるはず。
築100年以上の蔵を改装した1日2組限定の「ロクワット 西伊豆」 (静岡県・土肥)
300年の歴史をもつ旧鈴木二平邸を、丁寧に改修した「ロクワット 西伊豆」。母屋をイタリアンレストランとジェラテリア&ベーカリーに、2つの蔵を2棟のヴィラに。二ノ蔵は天井の高い1階建て。三ノ蔵は2階建てで、1階にリビング、2階にベッドルームがある。どちらも広いウッドデッキのテラスがあり、土肥温泉の源泉かけ流しの露天風呂付き。アメニティには、名産のびわにちなんだアイテムが用意されている。宿泊料は2タイプあり、人気はオールインクルーシブプラン。北鎌倉の「タケル クインディチ」監修のイタリアンのコースディナーと料理に合わせたワインや、蔵をリノベーションしたBAR、ジェラテリアで食べ放題、スパでのトリートメントまでも含まれている。
ロクワット 西伊豆
静岡県伊豆市土肥365
TEL.0558-79-3170
宿泊料金/二ノ蔵・三ノ蔵共に¥110,000~(スタンダードプラン)、¥155,000~(オールインクルーシブプラン、アルコールを含む飲食、スパトリートメント他含む)※ジェラート、ミニバーはどちらのプランでも含む
“月”をテーマにした究極のスモールラグジュアリー「木の間の月」 (静岡県・熱海)
温泉と美食で知られるホテルブランド「ふふ」の第一号「ふふ 熱海」の別邸。古くから日本人にとってゆかりのある“月”をテーマに、6室それぞれ「暁月」や「淡月」など、月の状態を表現。インテリアや小物類も客室名にちなんだものでまとめられている。全室に豊かな木々や植物で彩られたプライベートガーデンがあり、自家源泉の露天風呂を用意。湯船に漬かると、川のせせらぎと青空、木々の緑に囲まれて、どこかの秘湯に訪れたよう。スポットライトで水面に月が浮かんだような演出も心にくい。鮨割烹(すしかっぽう)では、伊豆ならではの“地金目”の中でも希少な“トロ金目鯛”が味わえる。ビオテルミ製法を用いたビオワインや日本酒と一緒に楽しみたい。
ふふ 熱海~木の間の月~
静岡県熱海市水口町11-48
TEL. 0570-0117-22
宿泊料金/プレシャススイート¥110,300~、プレミアムコーナースイート¥154,000~、ふふラグジュアリープレミアムスイート¥220,300(2名利用時の1室料金、税サ入湯税込み)
一つひとつが美しい、美術館のような「三輪 湯河原」 (神奈川県・湯河原)
背後に箱根山系をしたがえ、緑に抱かれるように左右へと延びたシャープなファサード。エントランスの先には水盤、そして長さ6メートルのバーカウンター、さらに窓の向こうに緑が広がる。3階建ての館内に17室。すべてにかけ流しの露天風呂を設置。湯船のスタイルにこだわり、木漏れ日が揺れる「木立のツイン」は正円、山の眺望が広がる「山水のツイン」はすべやかな手触りの楕円形、1室のみの「三輪のスイート」はうつわ作家の郡司ご夫妻が手掛けた、湯河原の花々や鹿を描いた手焼きの飴釉タイル。インテリアデザインや、薄墨で描かれた絵画作品など、お湯とアートに癒やされる空間だ。国際デザイン賞「iFデザインアワード2021」を受賞。
三輪 湯河原
神奈川県足柄下郡湯河原町宮上206
TEL. 0465-46-6111
木立のツイン¥36,000~、山水のツイン¥36,000~、三輪のスイート¥48,000~(2名利用時の1名料金、1泊2食付き、税サ込み、入湯税別)
気品ある白檀の香りに包まれ、黄金の湯が満ちる「箱根強羅 白檀」 (神奈川県・箱根)
館内に一歩入ると、ほのかな白檀の香りに包まれる。古くから愛されるこの香木には、心を落ち着かせ、免疫力を高め、抗菌や浄化の効果効能があるそう。そんな白檀のようなおもてなしを心がける宿が、こちら。箱根強羅の山間に広がる約3700坪もの敷地に、客室が16室のみ。すべての部屋の露天温泉や大浴場は、敷地内で汲み上げた黄金色の自家源泉のかけ流し。近代の日本デザイン界をけん引する匠の家具が置かれた室内は、箱根連山のみごとな借景が広がる。自室のお湯に漬かりながら、緑の息吹を深呼吸したい。食は相模湾の海の幸と、箱根の山の幸、旬の食材を中心にした本格懐石料理。箱根外輪山から染み出た地下水でとっただしがうま味を引き立てる。
箱根強羅 白檀
神奈川県足柄下郡箱根町二ノ平1297番5
TEL. 0460-87-0010
宿泊料金/途 (Michi)¥45,250~、遥 (Haruka)¥40,850~、香(Kou)¥51,850~、仭(Jin)¥60,650~など(1室2名利用時の1名料金、税サ入湯税込み)
ガーデンデザイナーが手掛けた庭園に憩う「別邸 ラ・松廬」 (千葉県・鴨川)
鴨川館の別邸となるこちらは、それぞれ400平方メートルものヴィラが5邸。ガーデンデザイナー玉井瑛晋が手掛けた華やかな庭園に、プライベートプールや専用ブロアバスがレイアウトされ、ゲストはテラスづたいにあちこち湯遊びができる。ちなみにプライベートプールは時期や時間帯により、温められていることもあるので、冬でもあきらめずに確認を。室内はリビング+和室+ベッドルームからなり、広さ114平方メートル。バトラーサービス付きで、12歳以下はNG。また、鴨川館本館の温泉施設も利用でき、太平洋を一望するルーフトップの絶景温泉プールや8種の湯処、美肌の湯など、多彩な温泉が楽しめるのもポイント。
別邸 ラ・松廬
千葉県鴨川市西町1179番地
TEL. 04-7093-5855
宿泊料金/プライベートヴィラ¥38,650~(2名利用時の1室料金、税サ入湯税込み)
アーユルヴェーダに専念する「ホテルキーフォレスト北杜」の1日1組限定リトリートヴィラ (山梨県・小淵沢)
建築とアートをテーマに掲げる「ホテルキーフォレスト北杜」が手掛けた、1日1組限定のかけ流し露天温泉付きアーユルヴェーダリトリートヴィラ「アーユス・ヴィラ・ミセン 美先」。チェックイン時のカウンセリングによりドーシャ(体質)を見極め、それに基づき、トリートメントや滞在中のアドバイスを行う。本場スリランカのドクター認定を受けたセラピストにより、伝統的な技術を日本流にアレンジした施術が受けられる。トリートメントや朝食、オプションのヨガクラスはヴィラ内で行うので、他のゲストとは非接触。森の中にたたずむモダン建築のヴィラは、建築家・北川原温によるもの。広いガーデンに大小2つ(温水と冷水)の露天温泉があり、交代浴も楽しめる。
ホテルキーフォレスト北杜
山梨県北杜市小淵沢町 10248-16
TEL. 0551-36-8755
https://www.kob-art.com/hotel/
宿泊料金/スタンダードプラン¥145,000~(2名利用時の1室料金、朝食、120分トリートメント2回付き、税サ入湯税込み)
8つの自然素材をヴィラで表現。五感を刺激する「湯の山 素粋居」 (三重県・菰野町)
アート+温泉+美食が調和したヴィラ。各棟は土や漆喰、漆など、8つの自然素材をテーマにまとめられ、同じデザインは二つとない。泡のようなガラスのシャンデリアの「硝白(しょうはく)」、巨岩がリビングに鎮座した「石砬(せきろう)」など、設計を担当した陶芸家・造形作家の内田鋼一の世界観の多彩さに、「次回はあの部屋に……」とリピートしたくなるはず。各棟はベッドルーム、和室、リビング、そして趣向を凝らした源泉かけ流しの露天風呂からなり、4〜6名まで滞在可能。美食にもこだわり、ミシュランスターシェフがプロデュースする直火料理や、老舗川魚の卸問屋のうなぎ料理、「翁達磨」主宰・高橋邦弘氏の流れを汲むそば店など、えりすぐり。
湯の山 素粋居
三重県三重郡菰野町菰野4842-1
TEL. 059-325-6682 (9:00-21:00)
宿泊料金/1泊2食付きプラン¥57,000~(食事付きプランはレストランによって料金が異なる。2名利用時の1名料金、税サ入湯税込み)
大自然の中で本格フレンチを「THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田」 (長野県・軽井沢)
美食家にファンの多い「ひらまつホテルズ」のフラッグシップが、長野県の御代田に2021年3月お目見え。6万平方メートルを超える広大な敷地に、ヴィラスイート9棟と本館28室。全室に半露天の温泉(大塩温泉)を用意。窓を開け放てば、清冽(せいれつ)な空気に触れ、夜には星空も見上げられる。美食への探求はさらに進み、ここでのコンセプトは「森のグラン・オーベルジュ」。その極めつきが、自然の中での食体験だ。芝生やテラスで広げるモーニングバスケット、季節のよい時期には、森の中にテーブルをセットして味わう本格的なフレンチなど、非日常が極上のスパイスに。高原野菜からジビエまで地元食材を中心に、国内外の最高級食材も加わる。信州の食材のおいしさに目を見張るはず。
THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田
長野県北佐久郡御代田町大字塩野375番地723
TEL. 0267-31-5680(代表) 予約受付時間9:00~18:00
https://www.hiramatsuhotels.com/miyota/
宿泊料金/デラックスツイン¥45,600~、ジュニアスイート¥53,200~、御代田スイート¥65,550~、ヴィラスイート¥72,200~など(1室2名利用時の1名料金、夕・朝食付。税サ入湯税込み)
専用船でわたる1島1温泉旅館「熊野別邸 中の島」 (和歌山県・勝浦)
島々が連なる“紀の松島”に浮かぶ、天然温泉宿。勝浦港から専用船でのみアプローチできる、プライベートな1島1旅館だ。島内に6本の源泉があり、湧出量1日700トンと、湯量が豊富。おまけにメラニンを分解する硫黄成分と、角質を取る弱アルカリ性による、ダブルの美肌効果も期待大だ。数ある温泉施設のうち、この宿の看板になっているのが、海にせり出したような「紀州潮聞之湯」。打ち寄せる波の迫力は圧巻! 客室は和モダンなデザインの「凪の抄」が新たに登場。こちらは全室に露天温泉が付いている。小さな島には尾根伝いに約450メートルの遊歩道が整備され、足湯や見晴らし台などに立ち寄りながらの散策が楽しい。
碧き島の宿 熊野別邸 中の島
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町勝浦1179-9
TEL. 0735-52-1111
宿泊料金/凪の抄 スーペリアコーナー¥57,750~、凪の抄ラグジュアリーデラックス オーシャンビュー¥69,850~など(2名1室利用時の1名料金、夕朝食付き、税サ込み、入湯税150円)
愛犬と一緒に過ごせる湖畔の和リゾート「びわ湖 松の浦別邸」 (滋賀県・大津市)
東に琵琶湖、西に雄大な比良山系が連なり、大自然に抱かれた温泉旅館。6タイプ10室の客室は広さ50平方メートル以上(テラスを含む)、すべてに温泉露天風呂を用意。注目は、どの部屋タイプも愛犬と一緒に滞在できること。ケージやトイレ、犬用備品も抜かりなし。館内には大型犬用と中・小型犬用の2つのドッグランや、シャンプー&ブローなどのお手入れができる“わんわん温泉”など、愛犬向けの施設も。客室のうち、ガーデンスイートは、芝生のプライベートドッグランまである。その他の部屋は、美しい琵琶湖ビューだ。食は近江牛をはじめ地元の食材を大切にしつつ、全国から取り寄せたえりすぐりの食材を使用。美食も評判が高い。
びわ湖 松の浦別邸
滋賀県大津市荒川711番地1
TEL. 077-592-2727 (受付時間 9:00〜18:00)
宿泊料金/デラックス¥32,000~、ガーデンスイート¥42,000~、松の浦DXスイート¥46,000~など(1室2名利用時の1名料金、夕・朝食付き、税サ入湯税込み)
温泉に美食、濃厚なショートトリップ。冬のごちそうも待っている!
どの宿も都市部から2~3時間ながら、まるで遠出したように豊かな自然の中にある。温泉でリラックスして、おいしい食事に舌鼓。しかもこれからは、カニなどの海の幸や日本酒もおいしい季節だ。コロナ禍でがまんしてきた分、思い切り羽をのばしましょう。ただし、ここでご紹介している宿は客室数が少ないので、予約はお早めに。
Editor’s Note取材メモ
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美食で知られるTHE HIRAMATSU 軽井沢 御代田の総支配人、佐藤智博さんが2022年やりたいこととは?
THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田の開業プロジェクトから携わり、ホテルを束ねる総支配人の佐藤智博さん。美食で知られるホテルブランドゆえ、本人もおいしい食事とおいしいお酒が大好き。「どんどん食べ歩きたいです。もともと食べ歩きが大好きで、仕事上の勉強をかねて、フランス料理はもちろん、和食やイタリアンへも。軽井沢のみならず、近隣の佐久や小諸といった町にも良いお店がたくさんあります。一人で行くことが多く、カウンターの和食店で大将や隣の方と談笑することもしばしば。時々行くカウンターバーでマスターと話しながらウイスキーを飲むのも好きです。2022年は、これまでに行って良かったレストランへ定期的に再訪したり、新しいお店を開拓したりしたいですね」
Content Writing
Chieko Koseki | 古関千恵子
旅行ライター。リゾートやエコなど、国内外のビーチにフォーカスして、主にラグジュアリーライフスタイル誌やウェブサイトに寄稿。これまで沖縄や関東近郊、離島のビーチが中心だったが、ここ最近は九州や関西、東北のビーチの美しさにも開眼。全国津々浦々を探訪中。
https://www.chieko-koseki.com/