Live Active® LIFE

PETS

犬のいる暮らし、猫と過ごす空間。
ペットとの理想的な関係を探る

Reported by Naomi Sakai

2021.6.14

コロナ禍でペット需要が増えている。先の見えない不安を抱えたまま、これだけ鬱々とした日々が続けば、愛くるしいペットに癒やされたいという気持ちが芽生えるのは自然な流れかもしれない。とはいえ、犬も猫も人間の言葉を話さない全く別の生き物。飼い主側の知識と覚悟が絶対に必要だ。そこで今回は、譲渡犬や保護猫たちとのハッピーなライフスタイルを送る2組に、出会いのストーリーから、暮らしを快適にする工夫、ペットとの向き合い方までをインタビュー。ペットと人間が末長く幸せに暮らしていくための、理想的な関係性を探る。

犬たちに導かれて、人生が一変。多くの学びやご縁を運んでくれた大切な存在

「犬と暮らす毎日は、何もかもが楽しい。健康的に過ごせるのも、犬に対する正しい知識を学ぶ機会を与えてもらったのも、犬が大好きな仲間たちと出会えたのも、すべて犬たちが運んでくれたご縁。気づけば犬に導かれていた、そんな人生ですね」

そう笑って話すのは、ゴールデンドゥードル2匹(あずきちゃん、モナカくん)と暮らす大津摩佐代さん。趣味のサーフィンを楽しみつつ、犬にとっての住み良い環境を求めて、東京と鴨川の往復生活を送っている。

「あずきはもともと、友人のお兄さんが飼っていたワンちゃんだったんです。お兄さん家族がヨットで世界一周に出るための用心棒として迎えたのですが、準備を進めていくうちにいろんな国を訪れるごとに狂犬病などの予防接種を打たなければならないことがわかり、犬のからだへの負担を考えて置いていくことになったんです。そんなとき、たまたま遊びに行ったことがすべての始まり。お兄さん家族が帰ってくるまでの3年間だけ預かるつもりが、いつの間にかうちの子になっていました(笑)。その4年後にあずきの双子の姉弟でまだ残っていたモナカも迎えて、大型犬2匹との暮らしがスタート。偶然の出会いから始まったのですが、犬を飼うことが夢だった父もとても喜んで、親孝行にもなったかなと思っています」

大津家の愛犬・モナカくん(左)とあずきちゃん(右)。どちらもゴールデンレトリーバーとスタンダードプードルのミックス犬だが、モナカくんはおっとりとした優しい性格で、あずきちゃんはちゃきちゃきのプードル気質で、元気いっぱい!
大津家の愛犬・モナカくん(上)とあずきちゃん(下)。どちらもゴールデンレトリーバーとスタンダードプードルのミックス犬だが、モナカくんはおっとりとした優しい性格で、あずきちゃんはちゃきちゃきのプードル気質で、元気いっぱい!

犬を迎えるなら、犬を擬人化しないこと。一緒に学び、成長していくことで、絆が深まる

11年前、あずきちゃんと出会うまで犬と暮らしたことはなかったという大津さんだが、日本で数少ないドッグビヘイビアリストの指導の下で専門的な知識を学び、今ではドッグトレーナーに!

「私が働いているドッグカフェ『インクラビット』は、ノーリードで犬たちがストレスなくくつろげるようにとの思いから作られた場所。いろんな犬たちが安全にストレスなくくつろいでもらうためには、犬の習性を深く知っておかないとトラブルになりかねないので、犬のニーズを満たしながら心因性の問題に対処するドッグトレーナーの資格を取りました。学科が全て論述で回答しなければならないので、ものすごく難しいのですが、正しい知識を得たおかげで、カフェを訪れるワンちゃんたちに正しく対応できるように。あずきとモナカとの関係性も、ぐっと深まりました」

お散歩コースの鴨川の浜辺にて。砂浜でのお散歩は、後ろ足が弱いモナカくんのトレーニングにも。

最近ではあずきちゃんやモナカくんのように譲渡してもらったり、シェルターなどで保護された犬を迎える人が増えてきたが、なかには「ペットショップで……」という人も少なくないだろう。それでも大津さんは、迎え方は人それぞれでいい。ただ、犬は人間と違う生き物であるという覚悟を持って受け入れてほしいと語る。

「資格を取るにあたって、犬の行動学や心理学などを学んで気づいたのは、犬がどんな生き物かほとんどの人が知らないまま育てているということ。犬と人間の関わりは古いので、みなさん犬のことを知っているつもりでいますが、犬は人間とは全く違う生き物。それなのに、犬の行動を擬人化して捉えて人間の考えや行動を押し付けてしまっているから、過剰に吠える、噛み付くといった大きな問題行動につながってしまうのです。保護犬でもペットショップでも受け入れ方は人それぞれ。大事なのは、迎え入れた後、どう犬を導いていくか。問題になってからかかる費用や時間を考えたら、早い段階で専門家の指示を仰いだ方が自分も犬もラクになります。犬とのハッピーな暮らしを長く続けていくためにも、犬と一緒に成長していく気持ちで知識を深めていくと、絆がもっとぐっと深まっていくはず」

朝晩のお散歩、知育玩具。犬の本能をしっかり満たすことで、犬との関係性がより良いものに

犬は言葉を話せないし、理解しない。だからこそ、人間が犬の習性を知り、寄り添うことが、結果としてお互いのハッピーな関係性を築く鍵に。

「犬の活動時間は約5時間。お散歩は朝晩1時間ずつ必要です。残りの3時間を有意義に過ごさせてあげると、本能が満たされ、心も落ち着き、夜はぐっすり眠ってくれます。犬には獲物を探すという本能が備わっているので、人間の感覚でご飯やトリーツを差し出すだけだと楽しみが見いだせなくなります。こうやって、知育玩具を使って食べさせ方を工夫してコミュニケーションをとりながら、本能を満たしてあげます。脳の酸素をいっぱい使うので、雨でお散歩にいけないときのストレス解消にもおすすめです」

(上)ご飯は1日3食。知育玩具を使ってあげることで、獲物を探すという本能を満たし、ストレスを解消。
(下)食事の後は、ミルクタイム。これも普通の器で差し出すのではなく、「リッキーマット」に注いで舐めさせる。舐めることで唾液が分泌され消化が促される。舐めるという作業そのものにも、心を落ち着かせる効果があるのだそう。

栄養バランスを考えた3種類のドライフードと酵素サプリで健康管理

お互いにとって、ハッピーでストレスフリーな暮らしを続けていくために、毎日口に入れるものや、身につける物にもさまざまなこだわりが。

「あずきもモナカも真っ黒なので、熱がこもりやすいんです。お散歩のときは日除けや熱中症対策のため、明るいカラーのお洋服を着せています。フードはグレインフリーのものをチョイス。チキンをメインに、お魚とターキーの3種類を栄養バランスを考えながら、消化を促す酵素サプリと一緒に毎日あげています。ミルクはアレルゲンが少なく犬の体に優しいヤギミルクを選んでいます」

あずきちゃんとモナカくんご愛用のハーネス。首輪のように犬の体に負担をかけにくく、ボディランゲージを阻害しない。
2匹とも12歳なので消化能力が衰えつつある。4種類の植物性消化酵素を配合した、ビッグウッドの「エンザイム」で消化をサポート。
3種類のドライフードのひとつ、FINESTの「フィッシュフォードッグ サーモン」。魚が主原料でオメガ3脂肪酸が豊富。
あずきちゃんもモナカくんも大好きな「tasty!天使のヤギミルク」。低脂肪・高栄養、かつアレルゲンが少なく犬の体に優しい。

猫で負った心の穴を埋めたのは、やはり猫。
笑顔と幸せをもってやって来た3匹3様のストーリー

お次は、「エンビロン」やオーガニック・ナチュラルコスメ、食品ブランドのPR代行を行う「ラキャルプ」代表・新井ミホさん。個性豊かで愛くるしいキジトラ3兄弟は、インスタでも大人気!

「13年連れ添った先代猫のミウくんはロシアンブルーでした。シャイで繊細でシルエットも声も上品。クールで他人には興味を示さないけれど飼い主には異常なほど愛情を注いでくれるそんな性格が大好きで、次に迎える子もロシアンブルーと決めていました。でも、ご縁があって出会ったグリは、和猫のキジトラ。ガニ股でドタバタ走ったり、キャピキャピした性格がとってもユニークで、一気にその可愛さの虜に。気づけば次男坊のラヴもキジトラ、末っ子のゆきはキジシロと、キジトラ3兄弟になっていました(笑)」

同じ毛柄だからか、3匹ともとっても仲良し。本当の兄弟のようにそっくりだけれど、それぞれの性格も新井さん家にたどり着くまでのストーリーも3匹3様。

「先代猫を亡くしたばかりの頃、激しいペットロスに襲われて。ミウのいない部屋に帰るたび悲しくて悲しくて、1ヶ月間、毎日毎日泣いていました。同じ猫仲間でもある業界の先輩に悩みを聞いてもらっていたちょうどそのとき、同じく美容業界の別の先輩から『子猫を保護したんだけど、どう?』というLINEが届いたんです。驚いたと同時に嬉しくなっちゃって、その場で『これはご縁よ』って盛り上がって。実際に会っていないのに二つ返事で『引き取ります!』と言っていました(笑)」

千葉の浜辺でひとりぼっちで泣いていたグリくん。瀕死の状態だったものの、運よく優しいご夫妻に保護され、献身的なケアを受けたおかげで1週間ですっかり元気に!

長男坊・グリくん6歳。しっかりもので面倒見がよく、弟たちから一目置かれる存在。フレンドリーな性格で、取材時は積極的にモデルを担当。

「グリは、普通なら死んでいてもおかしくない状況で大切に保護されたラッキーボーイ。だからなのか、家にやって来たときからハッピーなオーラをまとっていて、その日からピタッとペットロスがなくなりました。猫で開いた心の穴は、やはり猫でしか埋められないんだなあと深く実感させられました」

そして2年後に友人宅で生まれたラヴくんがやってきて、夢の多頭飼いがスタート。

「先代猫のときと同じようにふたりでベッタリ暮らしていたので、グリももれなく甘えっ子に。これでは留守にするたび不安な気持ちにさせてしまうと思い、多頭飼いにチャレンジしてみることに。そんなとき、友人宅で『子猫が生まれたから見にこない?』と誘われて、出会ったのがラヴ。グリにそっくりで運命を感じ、弟としてお迎えすることにしました。男の子同士なので仲良くなれるか心配だったのですが、グリがラヴをお腹に抱えてずっと毛繕いをして子育てしてくれたおかげで、すっかり仲良しに。生まれたときから人や猫の愛情をたくさんもらって育ったラヴは本当に幸せものです」

次男坊のラヴくん4歳。人よりも猫(グリくん)が好き。めったにシャーしない穏やかな性格と、ぽってりとしたわがままボディが魅力。

そして、その3年後にやってきたのが、キジシロのゆきくん。保護猫の一時預かりボランティアと保護場所を探している人をつなぐお仕事をされているAHAHAの矢沢苑子さんのインスタで見かけて一目惚れ。

「ゆきは静岡県生まれ。ボランティアのおばあちゃんからご飯をもらいながら家族と一緒に野生で暮らしていたのですが、おばあちゃんがご病気でご飯をあげられなくなってしまったことで矢沢さんのところに連絡が入り、保護されました。たった3〜4ヶ月とはいえ、野生で暮らしていたからか、人間が嫌いでまったく懐かず、グリ&ラヴとは勝手が違って戸惑いましたね。鋭い目つきで私を睨むし、夜泣きはひどいし、顔を近づけたら引っ掻かれて鼻の上がぱっくり割れて流血したり、お腹の中に虫がいて大騒ぎしたり、もう大変。格闘すること1週間、グリが献身的に子育てをしてくれ、ラヴも一緒に寝てくれるようになり、ようやく落ち着きました。未だに人は苦手で私よりもグリ&ラヴが好きなゆきですが、3兄弟での暮らしを楽しんでくれているようでホッとしています(笑)」

末っ子のゆきくん11ヶ月。キジシロのイケメン。人間よりも猫が大好きで、常に兄たちにくっついていたい甘えっ子。

猫は無償の愛と幸せを運んでくれる大切な存在。だからこそ猫への恩返しも忘れない

そんな個性豊かな3匹たちとの暮らしを楽しむ新井さんは、猫と人との暮らしを豊かにする猫ブランド「ラシャトン」を手がけている。猫たちとの出会いと別れの経験から生まれた猫たちへの感謝の気持ち、長年の暮らしのなかでたくさんもらった幸せのお裾分けをしたいという想いから生まれたそう。

「今思えば、30代の頃は猫との暮らしが当たり前すぎて、猫のことを深く考えずに過ごしてしまいました。そして、40代に入って突然やってきたミウくんとのお別れ。その悲しみを乗り越え、グリ・ラヴ・ゆきを迎えて、再び笑顔を取り戻すことができました。自分がいかに猫たちに無償のハッピーをもらっていたかを、そんな経験を経てようやく気付かされたんです。猫たちは大切な家族であり、いつでもそっと寄り添ってパワーと幸せを運んでくれる身近な応援団。そんなかけがえのない存在である猫たちに恩返しがしたくて、立ち上げたのが『ラシャトン』です。製品を通じて不幸な猫たちを減らし、幸せのバトンをつないでいけたら」

安心安全&ヒューマングレードのものづくりにこだわった「ラシャトン」のアイテムたち。左上から時計回りに、「ナチュラルチキンささみ」「水の除菌消臭スプレー」「ナチュラルチキンペースト」、「国産米ぬか発酵サプリメント」。売り上げの一部はLOVE&Co.などの保護団体への寄付やチャリティーイベントに充てられている。
行き場のない猫たちを保護し新しい飼い主へとつなぐ保護団体LOVE&Co.のグッズ。売り上げは猫の保護活動費に。

猫との暮らしは、人間同士にはない心地よい癒やしがある。その素晴らしさを知っているからこそ、愛情を受け取るだけではダメだと、新井さんは語る。

「猫と暮らしてみたいと考えている方には、その素晴らしさをぜひ感じてもらいたいとは思います。ただ猫を迎えるには、健康に幸せに天寿をまっとうできるように努めることが人間の義務。将来、病気になったり、介護が必要になるかもしれないことなど、いろいろ考えたうえで迎えてほしいと思います。愛情をもらうばかりではだめ。もらった分は、きちんとお返しする。そんな気持ちを持ち続ければ、絆も深まって幸せな猫ライフになるはず」

蜘蛛の子を散らすように逃げていった弟たちをよそに、撮影中も人のそばを離れないグリくん。取材対応もパーフェクト!

猫の習性を観察しながらインテリアを工夫。お互いの自由を尊重することで、暮らしがもっと楽しく快適に

新井さんのご自宅は、猫が3匹もいるとは思えないほどエレガントで洗練された空間。インテリアを楽しみながらも、随所に猫たちが快適に過ごすための工夫が。

「例えば、爪研ぎは部屋の隅でするので、壁際に沿って爪研ぎコーナーを設置。下に敷いているラグも爪研ぎとして使ってもいいような素材を選んでいます。それから、上下運動がマストな猫のために、布製のキャットタワーを窓辺に設置。猫にとってのストレスフリーとインテリアの両立を考えて工夫しました。棚の上に花器や小物をたくさん飾っていますが、すべて壁側に寄せ、手前に猫たちの動線として確保。ものを落とされることもなくなりましたね。猫がいるからとインテリアや趣味を諦めるのはちょっと寂しい。猫の本能を満たしつつお互いの自由を尊重すれば猫との暮らしがもっともっと楽しくなるはず」

爪研ぎは壁の隅に集めることで壁のバリバリ行動を防止。爪研ぎもかねた天然素材のラグもおしゃれ。
窓辺は猫たちの特等席。布製のキャットタワーで上下運動させつつ、ベッドやクッションを配置して思い思いにくつろげる空間に。
小物を壁側に寄せることで、“チョイチョイ”を防止し、猫の動線を確保。インテリアとキャットウォークをおしゃれに両立。

Masayo Ohtsu|大津摩佐代

Dog Trainer

JDBA認定ドッグトレーナー。職人のご主人と愛犬あずき&モナカの4人家族。犬にとってのより良い環境を求め、東京をベースに千葉県・鴨川で週末を過ごす生活を送る。鴨川ではドッグカフェ「インクラビット」でドッグビヘイビアリストとして勤務するかたわら、YouTubeで配信中のわんちゃんのコミュニティ番組「えみワン!」のパーソナリティーとしても活動中。

Miho Arai|新井ミホ

LA CARPE CEO
Phyto-Therapist

ラキャルプ代表。AMPP認定フィトテラピスト。植物療法士。IT関連企業の広報や化粧品PRを経験したのち、独立。オーガニック化粧品を中心としたフリーランスPRを経て、2012年にナチュラル&オーガニックライフ専門PR会社ラキャルプを設立。オーガニックコスメ&フード、マクロビオティック、薬膳、フレグランスブランド、クリニック等のブランディングやコンサルティング業務に携わる。2016年、ネコ(幸せ)のおすそわけブランド「ラシャトン」を立ち上げ。保護猫&保護犬支援なども積極的に行っている。
INSTAGRAM @mihoarai0527

Photo: Tetsuo Kitagawa

Editor’s Note取材メモ

  • 資格取得のため“お預け”だったサーフィンを楽しみたい!

    JDBAでのドッグトレーナーの資格取得の道はとてつもなく険しく、勉強期間は趣味のサーフィンがなかなかできなかったという大津さん。まもなくやってくる夏に向けて、今年こそは趣味も充実させたいそう。「今はサーフィンがしたくてたまらない(笑)。あずきモナカともにシニアなのでしっかりケアをしながら、自分の趣味も楽しめたら最高ですね」

  • 自然とつながりながら、ゆったり丁寧に、余白のある暮らしを

    仕事が好きで、ついつい予定を詰め込みすぎてしまうという新井さん。「これからはもう少しゆったり丁寧な暮らしを意識して、余白を作って生きていきたい(笑)。植物が好きなので、これまで以上に大切にケアをしたり、農家さんを手伝ったりと、生まれ育った場所を訪れたりそこにある自然に目を向け、つながりを大事にして循環を生み出すようなことをしていきたいですね」

Content Writing

Naomi Sakai | サカイナオミ

Beauty Writer

美容ライター。美容室勤務、美容ジャーナリスト齋藤 薫氏のアシスタントを経て、美容ライターとして独立。『25ans』をはじめとする女性ファッション誌や美容誌、web、百貨店媒体、広告などさまざまなメディアで執筆。ジャンルはメイク、スキンケア、ヘアケア、ヘルスケアをメインに、着物や占いまで多岐にわたる。無類の猫好き。