INTERIOR
カーテンとラグを替えて部屋も気分も新しく、日々を豊かに
Reported by Sanae Sato
2021.12.15
家で過ごす時間が増えたことで、部屋の環境を見直し、心地よく整えることの大切さが改めて見直されている。インテリアにおける面積が大きなカーテンやラグは、部屋の印象を大きく左右する存在。一度選んだら頻繁に取り替えるものではないからこそ、見るたびにいいなと思えるお気に入りを選びたい。時代の気分を捉えた色使いや小物選びで美しい世界観を生み出すインテリアスタイリスト、中林友紀さんに、カーテンとラグ、それぞれお気に入りのショールームを案内してもらった。
カーテンは大きな面積を自由に使える場所だからこそ、気に入ったものを
自宅でイエローの花柄のカーテンを愛用中という中林さん。「今のカーテンをかけたときに、部屋がとても明るくなりました。同時に、部屋の面積をこんなに占めるところなのだから、気に入ったものをもっと早く取り入れればよかったなと思ったのです。インテリアのなかでこんなに大きな面積を自由に使える場所は、ほかにはありません」と語る。
アートを飾るように、美しい色や柄を楽しむことが心の豊かさにつながる
そんな中林さんが注目するのが、イギリスの思想家であり、近代デザインの父でもあるウィリアム・モリスのデザインを今に伝えるMORRIS&Co.のもの。暮らしのなかの美しさの重要性を説いてアーツ・アンド・クラフツ運動をけん引したモリスのデザインは、今も世界中で愛されている。日本の輸入元総代理店である、中目黒のマナトレーディング東京ショールームにお邪魔した。
2021年に創設160周年を迎えたMORRIS&Co.。昨年は建築家のベン・ペントリースのコラボレーションしたシリーズが登場。モリスのデザインは当時のままに、配色が新しくなって新鮮な印象だ。
マナトレーディングの前島七絵さんにもお話を伺うと「カーテンの長さは日本では床すれすれが一般的ですが、長めにしてブラウジングするとインテリア性を高めるだけでなく、冷暖房効果を発揮します。海外では10〜20cmくらい丈を長めにとる例もよく見かけますね」と教えてくれた。さらに「ヒダを作らず窓と等幅でフラットにしてもいいですし、3つ山ヒダでたっぷり2倍幅にするとクラシカルな印象に仕上がります。そのほかにもギャザーやウェーブという方法も。また、裏地をつけることで生地が重くなり、ドレープが出やすくなりますよ」とのこと。
シンプルなカーテンは、ドレープの美しさや素材感に注目
シンプル派に中林さんがおすすめするのは、デンマークのテキスタイルメーカーのクヴァドラ。環境に優しい素材を用いつつ、デザイン性も追求している。
窓辺の景色を彩る豊かなカーテンの表情に、気持ちもリラックス
家の内外をつなぎ、窓辺を彩るカーテンは、素材、色、柄の種類も豊富な上に仕上げの方法も本当にさまざま。外からの目線が気にならないリビングルームは、カーテンをつけないという選択肢もある。窓側にはレースのカーテン、部屋側には遮光カーテンというのが日本の家では定着しているけれど、もっと自由に考えてもいいはず。窓辺の景色を彩る、豊かなカーテンの表情を自分らしく楽しもう。
ラグは空間や家具の大きさに合わせ、自分なりのサイズ感を見つけて
中林さんの家のリビングルームは黄色い花柄のカーテンにグリーンのカーペット、和室にはモロッコラグを合わせているという。「ラグにこうじゃなきゃダメというルールは特にありません。それぞれの部屋の大きさや、ソファのサイズに合わせて、自分なりのサイズ感で選んでみてください。ただしダイニングに敷く場合は、段差が気にならないようダイニングセットが全部乗る大きさのものを選ぶのがおすすめです」
ハンドメイドの温かみあふれる、トライバルラグの魅力
中林さんがスタイリングの仕事でよくお世話になっているというのが、ハンドメイドラグの専門店「レイアウト」。イランのものを中心にアフガニスタンやトルクメニスタンで作られるギャッベやペルシャンラグ、トライバルラグを扱っている。
「トライバルラグはモダンな家具に合わせるとかっこいい。エスニックなものやナチュラルな木製家具より、イームズのチェアや、アルネ・ヤコブセンのセブンチェアなどモダンなデザインと合わせるのがおすすめです」と中林さん。
一枚で部屋の印象がガラリと変わり、アクセントになるラグ。ソファの前やダイニングはもちろん、玄関やベッドサイド、チェストや姿見の前などにも。「ウールのラグは一年中使えます。お手入れも普段は毛流れに沿って掃除機をかけるだけで十分です。たまにめくった状態のままにして、湿気を逃がすといいですね」と教えてくれたのは、自ら現地に赴きバイイングもするレイアウトの平井香さん。
パズル感覚で組み立てるDIYカーペット
そのほかに中林さんがおすすめとして挙げてくれたのは、堀田カーペットの<ウールタイル>。「50センチ角のウールのカーペットを並べて置くだけでラグにもなるという、新しい床材。撮影現場でも興味をもたれる方が多いですね。好みのサイズを自分でアレンジできて便利なんです」ウール100%でずっと触れていたくなる肌触り。調湿性や防音効果もあり、一年を通して快適な空間をつくってくれる。
自然と人が集まる幸せな場所に。ラグが生み出す心地よさ
ソファやチェアに座ったときに足先に触れる柔らかなラグの感触、じかに座ったり大きなものなら寝転んだり。ラグを敷くと、そこに自然と人が集まることが多いといいます。人だけでなく、ペットの犬や猫もラグが大好き。視覚的効果もさることながら、くつろぎと居心地のよさを生むラグを取り入れることで、家での過ごし方にも変化が生まれるはず。
五感に働きかける心地よさが、心豊かな日々につながる
風をはらんでふわりと揺れるカーテン、鮮やかな色彩のラグ。カーテンを朝晩開け閉めするたびに手に触れる感覚や、肌で感じるラグの柔らかな風合いも気持ちに潤いを与えてくれる。無意識に五感に働きかける小さな心地よさが、居心地のよい空間につながり、日常を心豊かに過ごすきっかけになっていくはずだ。
Yuki Nakabayashi | 中林友紀
インテリアスタイリスト。自由な色使いのグラフィカルな構成や、エスニックテイストを組み込んだスタイリングを得意とし、内装デザインのディレクションも手掛ける。雑誌や広告、商業施設のディスプレイなど、幅広い分野で活躍中。
http://nakabayashiyuki.jp/
instagram:@yuking_o
Photo: Hirotaka Hashimoto (Manas Trading, Layout)
Editor’s Note取材メモ
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2022年は、会いたい人を訪ねてゆっくりと
中林さんに2022年にしたいと思っていることを伺ったところ「国内をのんびり旅したいですね。地方に移住した友人やクラフトの産地を訪ねたり、仕事で出会った作家さんに会いに行ったり。簡単にできそうでやっていないことを、ひとつずつやりたいと思っています。なかなか一緒に過ごせていない母も、どこかに連れて行きたいですね」とのこと。最近アシスタントが独立し、少し肩の力を抜いて自分の時間を楽しめるようになったという中林さん。多忙なお仕事の合間に、旅先で息抜きをしてリフレッシュしていただきたいものです。
Content Writing
Sanae Sato | 佐藤早苗
Editor
編集ライター。現ハースト婦人画報社に約9年勤務、『エル・デコ』ほかの編集に携わる。その後ワイデン+ケネディ トウキョウにてPRを担当。現在はフリーランスとして、ライフスタイルやデザインを軸に活動する。
https://sanaesato.com/