INTERIOR
プロに学ぶ、“自慢したくなるキッチン”のつくり方
Reported by Miki Numata
2021.10.15
キッチンを楽しく充実したものにしたい! 料理好きならずとも、一日を家で過ごす時間が増えてくると、キッチンの使い心地は快適ライフの重要なポイントだ。小物やツール、食材など、こまごまとしたアイテムが多い場所だけに、収納や動線の工夫は、使いやすさの決め手。上手なキッチンづくりの秘訣を、人気料理家、みないきぬこさんに伺った。料理が楽しくなる、そしていつまでもそこにいたくなるようなキッチンへ、一歩前進!
キッチンは、生活の中心
今回、素敵なキッチンを公開してくれたのは、料理家として活躍中のみないきぬこさん。テレビや雑誌、書籍などで、作りやすくてヘルシー、そしておいしいレシピを紹介している。「料理を仕事にしているので、キッチンは仕事場でもありますが、ここは自宅、しかもダイニングキッチンなので、家族の生活の場にもなっています。つまり私の生活の中心。一日の多くの時間をここで過ごしています」。そんなみないさんが、キッチンをできるだけ居心地のよい場所にするために工夫していることを伺った。
使い勝手も見た目もよい、一石二鳥の「見せる収納」
まずは、誰もが気になるのが収納。こまごまとしたツールや食材など、キッチンにはありとあらゆるものが詰まっている。油断するとすぐ散らかってしまうという方も多いはずだ。「私はもう、覚悟を決めて『見せる』ことにしています」と、きっぱり。「そのほうが、何がどこに入っているかわかって使いやすいし、食材の管理にも便利です」。アイランドキッチンの横に設えたガラス扉付きの棚には、グラス類やカラフルな紙ナプキン、ふきんなどを入れて、いつでも取り出しやすいようにしてある。これなら、人が集まるときにも「セルフでお願い!」なんてことが言えて、便利、かつ楽しい。「扉がきっちり閉まっているより開放感があるし、見えているから自然と整理するようになります」
オープンシェルフには、電子レンジなどの調理家電を置いて、調理に使うガラスのボウルや保存容器をスタッキング。いわば「お仕事棚」だ。ここには、棚のピッチをあえて高めにしてゆったりと空間をとり、奥のものまで手が届きやすいような工夫が。「ぎっしり詰め込むと目も手も届かなくなって、奥に入れたものを使わなくなることがあります。毎日使うものは、しまい込まずにぬれた手でもすぐ出せるよう、扉のないラックが便利ですね」
色や質感を統一すれば、インテリアとしても素敵に
みないさんのダイニングキッチンでパッと目につくのが、鍋や保存瓶を置いた棚。大小さまざまのいろいろな形の鍋や、自家製の果実酒などがずらりと並んでいる。「仕事柄、鍋はたくさん持っています。新しいのを見つけるとつい買ってしまいたくなりますが、そんなときは、機能や使い勝手はもちろん、ここに仲間入りさせた様子をイメージして、色や形、大きさなどが本当にフィットするかどうかも考えます」。色のトーンをそろえたり、大きさのバランスを整えることで、鍋やキッチンツールもインテリアの一部になる。「ガラス瓶はもともと集めるのが好きで、おしゃれなものばかりではなく、ごく普通の調味料の瓶も取っておきます。中身が見えて見た目にきれいなこともありますが、ジャムや果実酒などをお裾分けするときにも重宝するんです」。ルックスもよく実用性もあって、まさに一石二鳥!
必要なものがすぐ取れるように、作業台を整理
中央に大きなアイランドがあるキッチンでは、壁際の調理台は作業以外に収納スペースとしても活用。「壁も有効利用です。1本バーが通っているので、S字フックを使ってツールや鍋などをかけています。あとはマグネット式のフックも大活躍。だから、レードルやヘラなどを買うときは穴あきのものを探します」。真ん中に立っているコックさんは「シリアの市場で目が合って連れて帰ってきた」というツールスタンド。「これは特別ですが、ツールスタンドは通常ガラスのものを使っています」。毎日洗うものではないので、中が汚れるとすぐにわかるように気を付けているのだとか。「見た目にもスッキリしますし、清潔を保てます」。常にきれいなキッチンは、こういうちょっとした心がけ次第。学ぶところ多し!
「スパイスが好きでいろんな料理に使うので、さっと取り出せるように調理台に出しています」と、みないさん。色や形はさまざまだが、ガラスやステンレス、アクリルなどで質感を統一し、瓶を重ねたりラックやスタンドを使ったりと工夫して、見た目にはスマート。「わざわざ容器を移し替えたりするのは面倒ですよね。でもこうして斜めに置けるラックなどを上手に使えばそれほど気にならなくなります」
一生大切にしたい、オーダーメードの食器棚
みないさんがキッチンでいちばん大切にしているお気に入りが、こちらの食器棚だ。「家具職人さんに注文して、木材を選ぶところから細かに相談しながらつくっていただきました」。トップには持ち上げて開けるガラスの扉があって、どことなく昭和の薫りがするデザイン。「仕事の合間に、立ったままここでお茶を飲んだり、ハイチェアに座って作業することも。木の手触りもよくて本当に気に入っています」
最もこだわったのは、「スマートで力持ち」な棚板。重い食器をしっかり支えられるよう厚みのある板を使いながらも、見た目を軽くするために手前を斜めにカットして薄く仕上げてもらったのだそう。「これならたわむこともなく、食器を重ねても安心。ガラス戸も滑りがよく、日本の素晴らしい職人技を日々実感しています」
いちばん上の浅い引き出しには、小皿やカトラリーが。「収納力もばっちりです。一目で全体が見えるので、出し入れの時間短縮にもなります。賢い子なんです!」
ガラス扉の下には、かわいい小皿がたくさん入っている。「旅先で見つけたものや、色柄が気に入ったものをちょこちょこ買うので、バラバラです」。けれど、それがまた素敵。見ているだけでも楽しくなる。
こんなキッチンだったら、一日中楽しく過ごせそうだ。「そうですね、気付いたらずっとキッチンにいます。朝、家族を送り出してから、ここで音楽を聴きながら仕込みをしたり、ぼうっと考え事をしたり。疲れたらふと外を眺めてリフレッシュ。ここが私の居場所なんだな、と感じます」
みないさんのお気に入りツールを拝見!
仕事にも日々の食事にも使っているという、みないさんのお気に入り道具を紹介していただいた。「ぜひおすすめしたいのは、丸いトレーとザル。揚げものや野菜の水切りにも使えるし、トレーのほうはそのまま食卓に出すこともあります」。大小2種類の大きさがあり、目の細かさやカーブの具合などが使いやすいのだそう。「あとは、細くて小さめの泡立て器。卵1個を溶くときなどに使いやすいですし、手に馴染む感じがいい」。このサイズのものはなかなかなく、見つけたときは「これだ!」とピンときたという。また、計量できる注ぎ口付きのボウルも便利、とみないさん。「大さじ3など少し多めの分量を一度に量ることができ、スプーンと違ってそのまま台に置けるから、料理の下準備が楽になります。重ねられるので違うサイズを2〜3個持っておくといいですね。あとは、百円ショップなどでも手に入る小ぶりの計量カップもおすすめです」。料理をするのがちょっとだけ楽しくなり、そして小さな便利を重ねることで手間や時間を節約できることも。ぜひ参考にしてみて!
Kinuko Minai | みない きぬこ
料理家。女子栄養大学を卒業後、料理研究家の枝元なほみさんのアシスタントに。その後2007年に独立、雑誌やテレビ、書籍などで活躍するほか、女子栄養大学で非常勤講師として調理実習の講義も手がける。著書に『はじめての電気圧力鍋』(家の光協会)、『野菜がおいしい減塩おかず』(女子栄養大学出版部)など。
Photo: Tetsuo Kitagawa
Cooperation: Kinuko Minai
Editor’s Note取材メモ
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日常生活のなかでこだわっているポイントは?
「『テーブルの上に物を置きっぱなしにしない』『時々遠くの景色を眺める』、そして『温かい飲み物を一日のどこかで飲む』。いずれも『こだわり』と言うほどのことでもないかもしれませんが、気持ちよく暮らすために、そして忙しい日常にふっと手を止めて呼吸を整え、自然や自分に向き合うようにしています」
Content Writing
Miki Numata | 沼田美樹
Editor&Writer
広告制作会社、アートギャラリー、出版社で勤務した後、フランスの美術センターにてキュレーターのインターンを経験。帰国後、美術雑誌、インテリア雑誌、グルメ雑誌、グルメサイトの編集を経て独立。食とライフスタイルを中心に編集、執筆を行う。趣味はお菓子作りとトイレのサインコレクション。