FOOD
カリスマ食品バイヤーに聞いた
「今求められる食の安全」「本当に美味しいもの」
Reported by Naomi Sakai
2021.3.15
食品バイヤーとして、日本全国を駆けめぐり、まだ世に出ていない「とっておきの美味しい」を発掘し、生産者に代わって食卓に届け続ける「スマイルサークル」の代表・岩城紀子さん。巣ごもり生活で日々の食事を見直す人が増える今、改めて知りたい「自分を守る食」のこと。そして、岩城さんが「これが一番美味しい！」と太鼓判を押す、とっておきのグルメをご紹介。
健康でいることが、すべての基本。
本物を選び食べることが、未来につながる
アメリカのスーパーでは、日本のお菓子の袋に「添加物に対する警告」がつけられていること、ご存じだろうか？ もちろん、安心安全で美味しいものを作っている食品メーカーはたくさんある。だが、その一方で、日本が世界屈指の添加物大国でもあることは、まだ知られていないと岩城さんは言う。
「現在、日本で認められている添加物の数は約1600種類もあるのに対し、アメリカは300種、ヨーロッパにいたっては50数種程度。食品添加物のすべてが悪いわけでは決してないけれど、その数が増えるほど、さまざまな不調を訴える人々が増えてきたのも事実。そう考えるとやはり、食品添加物の摂取は必要最小限にしたいと思うのです」
食品添加物を研究する会社に勤めていた経歴をもつ岩城さんは、日本の食の安全を守るため、仲間たちと「スマイルサークル」を設立。2008年から、食品バイヤーとして安全で美味しい日本の食を地道に発掘し、正しく広めていく活動をスタートさせた。岩城さんの眼識で選び抜かれた商品は次々にヒットし、一緒に仕事を進める大手百貨店やスーパーなど、食料品業界から絶大な信頼が寄せられるようになった。
「食べることは、生きること。そして自分を守ることにつながります。体が健康でさえあれば、仕事だって恋愛だって家庭だって、何度でもやり直せる。健康であることがすべての基本なんです。健康はお金では買えないからこそ、食を見直そうという動きが出てきたのは当然のこと。体が喜ぶ本物を選び食べることが、未来につながると思っています」
2014年には、岩城さんがオーナーをつとめる食のセレクトショップ「グランドフードホール」を兵庫県・芦屋にオープン。地元客を虜にするその活況ぶりはグルメ業界でも大きな話題に。メディアでも度々取り上げられ、知る人ぞ知る人気ショップとして注目を集めた。2018年には、東京の六本木ヒルズに2号店がオープンした。
No.1は流通に乗らない!?
本当に美味しいものを届けるために
「グランドフードホール」出店のきっかけは、食品バイヤーとして日々感じていた“一番美味しいものほど、食卓に届けられない”というジレンマから。
「一番美味しいものがあるってわかっているのに、工場が小規模過ぎてたくさんのご家庭の食卓へ届けることができない歯がゆさを感じていたあるとき、スタッフの一人が『一番美味しい商品だけ集めたお店があったらいいのに』とつぶやいたんです。グロサリーだけでは採算が合わないと諦めかけたのですが、ローマの有名なフードホールで、魚を1匹買って半身はそのまま持ち帰り用に包んでもらい、残りはシェフに調理してもらってその場でワインと楽しんでいる女性を見て、『これだ！』と。デリ（惣菜売り場）とグローサリーをくっつけた日本版フードホールとして実現することができました」
本当に美味しいものを選び抜く、絶対的な舌と眼識をもつ岩城さん。日本全国にある眠れる絶品をどうやって探し出し、どう選び抜いているのだろうか。
「47都道府県に食のブレーンのような方々がいて、私たちの足だけでは探しきれないマニアックなものや新商品を見つけて送ってくださるんです。そうして皆さんと協力し合って全国から集めたものを日々ジャッジしているわけですが、選ぶ基準は、真心込めてちゃんと本来の作り方で作っている美味しいものであること。そして、10年後も20年後も残したいもの。ただ本当にいいものって、理屈抜きに手に取っただけでわかるんですよね。手のひらから『すごく真心を込めて作っているんだな』って、“気”のようなものが伝わってくる。そんなふうに、いい気持ちが入っている商品を大事にして、たくさんの人に届けられたらと思っています」
最上級の“美味しい”を味わう！
「グランドフードホール」絶品フード10選
「グランドフードホール六本木店」の商品の中から、今一番、おすすめしたいとっておきの商品を岩城さんが厳選！ オンリーワンの理由と、ひとつひとつの商品に注がれた愛情たっぷりのコメントとともにお届け。
トマトの中のトマト
理想のトマトジュースを探し求めていた岩城さんが、10年かけてたどり着いた究極のトマトジュース。
「北海道の元トマト博士“多田のおじいちゃん”が、奥さんと二人で世界一美味しいトマトジュースを作ろうと出来上がったのがこちら。年々生産数を上げてくれて、今では家族やご子息が手伝ってくれるように。小さいけれど後世に残したい事業を守ることが私の一番目指していること。その全てを叶えられた思い入れの強い逸品です」
蔵ハイ 瀬戸内レモン 高知ゆず＆山椒
日本酒・美丈夫の蔵元「濱川商店」が本気で作った “本物の”チューハイ。
「チューハイを飲むといつも頭が痛くなってしまうので避けていましたが、これは余計なものが一切含まれていないせいか、美味しくいただけます。瀬戸内レモンや高知のゆずの果汁がたっぷり含まれていて甘ったるさはなく、むしろ体に良いのでは？とごくごく飲みたくなるほど。ソーダ割りでもロックでもおいしいですよ」
本山油
健康に役立つアマニ油を美味しく楽しみながら取り入れられる万能調味料。
「体に良いアマニ油を、毎日無理なく、たくさんの人にとってもらうため、公邸料理人として各国を巡られた本山シェフにお願いして、「薬膳で体に良いアマニ油」を作っていただきました。使い方は無限大、ネギやパクチー、みょうが、セロリなどの香味野菜と一緒に和えるとさらに絶品。美味しくて体に良いとはまさしくこれです！」
宝塚牧場ヨーグルト（島ざらめ入り）
兵庫県宝塚市でモーツァルトを聴きながら育った牛たちの牛乳を低温殺菌し、そのすぐ隣の工場で造られているヨーグルト。
「少人数の小さな工場のため、たくさん生産はできませんが、グランドフードホールオリジナルバージョンで、種子島のざらめ糖を使用して造っていただきました。免疫力を上げるため腸内環境を整えるのにヨーグルトは役立ちますが、何よりこれは美味しいから毎日食べたくなります！」
点心のパン
もともと中華の点心を作っていた料理人が開発した、牛乳も卵も使わない食パン。
「世の中にはこの食パンよりインパクトのある美味しい食パンはもちろんあるでしょう。でも、点心のパンは毎日食べても飽きないのが一番の魅力です。１日目は焼かずに手でちぎってふわふわとした食感を楽しみ、２日目はトーストにしてバターやジャムで。サンドイッチにもなんにでも合ってしまう、本当に毎日食べたくなる食パンです」
ごま油
岩城さんが“これ以上のごま油に出合ったことはない！”と絶賛する、香りの高さが自慢のごま油。
「韓国でごま油が有名な理由は、とても香り高い良質なゴマがとれるから。でも、今や高価になってしまった韓国産のゴマは手に入りづらく…。ですが、こちらの会社は100％韓国産を使用し、石臼で低温圧搾することにより、どこよりも香り高いごま油に。さっとかけるだけで美味しさが倍増、きっと一生使いたくなると思います」
ミスター餃子
全国の餃子を食べ歩いている餃子マニアに教えてもらったという専門店の焼き餃子。
「野菜が多い、肉が多い、ニンニクが強い、などの偏りがなく、とにかくすべての具材が黄金バランスで包まれている絶品餃子です。そしてなぜか料理が下手でも綺麗に焼けるのもうれしいポイント。卸売りはほとんどされていませんが、グラホのために特別に手づくりで置かせてもらっています！」
甘辛白菜キムチ
数十年京都でキムチを作り続けている“ほし山おばあちゃん”の貴重な無添加キムチ。
「船に乗り込みアミエビをとることから始まり、白菜の美味しい産地を見極めて白菜とお話しをしながら塩の量を決め、調味液に漬け込んでいきます。添加物がないのにこの旨さ。きっと100年前のキムチはこういう味だったんだと思います」
和食の原点 基本だし
家庭でも手軽に美味しいだしを味わいたい、という声に応え、日本料理「湯木」が何度も調合を繰り返し仕上げた絶品だし。
「プロほどお料理上手じゃないけれど、美味しいものは大好きで、できるなら添加物を摂りたくない、そんな世の中に一番求められるタイプのおだし。これさえあれば、誰でも料理上手に」
マクロビオティックビューティーペースト
パワフル＆アクティブな岩城さんの毎日を支えるペーストタイプの天然サプリメント。
「86種類もの素材を8年がかりで発酵熟成させるという、驚きの手間隙をかけて造られているうえ、体に悪いものが何一つ入っていない、貴重な天然サプリメント。私は毎晩一本飲むのを3年続けていますが、寝ている間に腸をキレイに整えてくれるみたいで翌朝すっきり！」
岩城さんが太鼓判を押した商品は、どんよりしがちな巣ごもり生活を豊かに彩り、笑顔でいっぱいに変える力がある。それは、本当に美味しいものだけが、心と体を満たすことができるから。自分の体を守れるのは自分だけ。本当に美味しいものを選び抜くスキルが、この苦境に打ち勝つ鍵を握っている。
グランドフードホール オンラインストア
Noriko Iwaki ｜ 岩城紀子
Smile Circle CEO
Food Buyer
スマイルサークル代表取締役社長。1972年、兵庫県生まれ。GAP JAPAN、機能性食品開発のバイオベンチャー企業の役員を経て、2008年に「スマイルサークル株式会社」を設立。さまざまな食品会社のコンサルタント業やバイヤー代行を務める。14年に「株式会社グランドフードホール」を設立。兵庫県・芦屋市と東京・六本木に店舗を展開。百貨店など100社の販売先、全国各地の2600社のメーカーと取引している。著書『裏を見て「おいしい」を買う習慣」（主婦の友社）も好評。
Photo: Sadato Ishizuka
Editor’s Note取材メモ
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最近の心が震えた出会いは高村刃物製作所の「包丁」！
「ひとつの柿を半分に切って、片方は高村刃物製作所の包丁で切り、もう片方は普通の包丁で切る。それをスタッフに試食してもらったら、全員が高村刃物製作所の包丁で切ったほうが美味しいって言うんです。同じ柿なのに、包丁だけでそんなに美味しさが変わるって、すごいですよね？ 聞けば、世界の名だたるシェフが、こぞってここの包丁を使っているそうで、注文しても数カ月待ちなほど大人気なんだそう。久しぶりに感動で震えました！」
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並外れた目利き力は美容でも発揮！美肌の秘密はエンビロンにあり
取材中ずっと気になっていたのが、岩城さんのキメが細かく透明感あふれる美しい肌。その秘密を伺うと、なんと普段から「エンビロン」のスキンケアを愛用していることが判明！ 聞けば、通っているクリニックで紹介されて以来、気に入ってずっと使い続けているのだとか。日々の食だけでなく、美容においても“絶品”にたどり着くとは、さすがです！
Content Writing
Naomi Sakai ｜ サカイナオミ
Beauty Writer
美容ライター。美容室勤務、美容ジャーナリスト齋藤 薫氏のアシスタントを経て、美容ライターとして独立。『25ans』をはじめとする女性ファッション誌や美容誌、web、百貨店媒体、広告などさまざまなメディアで執筆。ジャンルはメイク、スキンケア、ヘアケア、ヘルスケアをメインに、着物や占いまで多岐にわたる。無類の猫好き。
