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FASHION

「忙しいママ」のお洒落を応援、OHGA飯田由梨さんの共感を生む服作り

Reported by Saori Tsuchiya

2022.8.16

デザイン性のあるコンフォートアイテムを発信し、人気ファッションブランド「OHGA」のディレクターとして活躍する飯田由梨さん。子育てと並行して「好き」を仕事にするバイタリティは、多くの働くママたちの憧れ。インフルエンサーとしても同世代を中心に幅広い支持を集めている。そんな飯田さんのワークライフバランスの取り方、この秋のお洒落計画について伺った。

OHGAが人気の理由は「着る人をいちばんに考えているから」

学生時代からファッションが大好きだったという飯田さん。就職、結婚、子育て、ブランド設立という時系列の中で、常にお洒落をすることからエネルギーや楽しみ、そして自信をもらってきたという。そんな人生経験とともに培ってきたお洒落の視点は、今年で5年目となるOHGAのクリエイションにも生かされている。

お洒落心をもう一度呼び覚ましてくれたきっかけは、1足のフラットシューズ

出産前まではアパレル販売員として働いていたこともあり、ハイヒールを履いていつも気合を入れたお洒落を楽しんでいたそう。

「子どもを産んでからは日常に忙殺されて、メイクもしないし、靴はいつもスニーカーばかり。久しぶりにきれいな靴を履いても、靴ずれして長い距離を歩けない。そんな自分に嫌気が差していたんです」

そんなある日、何げなく靴職人の友人に「痛くない可愛いペタンコ靴が欲しい」と相談したところ、「じゃあ一緒に作ってみる?」という流れに。最初の頃は自分のためだけの靴づくりだったが、周囲からの要望に応えるうちに徐々に生産数を増やしていった。そして5年前、飯田さんが32歳のときに起業しOHGAをスタートした。

「過去に販売員だったとはいえ、ものづくりに関する知識はほぼなかったので、職人の友人にそのあたりはリードしてもらいながら、二人三脚でやってきました。私が作りたい靴のイメージを細かく伝え、使う素材や形を決め、出来上がってきたサンプルに足入れをする。何度も修正を重ねていく根気のいる作業ですが、欲しかったものが出来上がったときは最高の気分です。今は靴だけでなく服も作るようになりましたが、“自分が欲しいものを作る”というベースはずっと変わらないです」

左から/ストラップパンプス(ブラック、ゴールド)各¥23,100・ラインサンダル¥17,600/OHGA

働くこと、子育て、女性として年齢を重ねること。そのすべての視点をものづくりに生かす

作りたいもの、欲しいものは常に頭の中にはっきりあるという飯田さん。その発想の源は、常に自身の経験からくるものだとか。

「片手でサッと脱ぎ履きできる靴は、手が埋まりがちな子育て中にもうれしい。袖口にゴムが入っているブラウスは、水を使うときにも便利……みたいなのを常に考えています(笑)。子どもが小さいときは靴だって踏まれるし、服だって汚されて当然。だから軽く拭くだけできれいになる、シワになりにくい、お家洗いできるなどの機能性も大切なところ。何も気にせず、場所も選ばず、オールマイティに使えるものづくりを目指しています」

現在37歳。年齢を重ねていくことに加え、子どもに手がかかる時期が過ぎたことが影響し、着たい服・作る服の幅を広げている。

「つるんとした素材のブラウスやフルレングスのパンツ、さらにはヒールのある靴など、子どもが小さいときには無理だった“きれいめ”のものが徐々に着られるようになってきました。それは子育てが落ち着いてきた証しですし、やっと自分が本来やりたいスタイルに戻ってきた感覚があります。一方で年齢を重ねるごとに体形の悩みは深刻化。丈感やシルエットの工夫でカバーしながらも、“ただ無難なもの”に収まらないよう、1枚でサマになる主役感のあるデザインにこだわっています」

着る人のリアルな声が、作る上でのいちばんのモチベーションに

OHGAは実店舗がないEC専用ブランド。そのぶん百貨店などで行われるポップアップは、実際に商品を手に取って見られる貴重な機会。同時に飯田さんにとっても、ユーザーの声を直接聞いてものづくりの参考にできるチャンスなのだとか。

「お客様からは“着ていると絶対に褒められるんです”とか“めちゃくちゃ気分が上がります” などの声をよくいただきます。ちょっとしたことかもしれませんが、お洒落で自己肯定感を上げるのは毎日を楽しくポジティブに生きていく上で大事なこと。私自身も鏡を見て“やっぱり可愛いな”と思いながら着ていますから(笑)」

対面のポップアップのほか、インスタライブやECサイトのお問い合わせなどから届くメッセージにも耳を傾け、無駄なコストをかけず、クオリティに見合ったプライスで商品を提供しているのも飯田さんのポリシー。ご意見・ご要望も必要と判断すれば、即反映する。

「ご要望で目立つのが、“パンツのSサイズを買って、さらに裾を折ってはいています”など、もうワンサイズ小さいのが欲しいということ。今後、作れるものに関しては小さいサイズを積極的に作っていきます。そういう点でも、うちはお客様との距離が近いブランドなんです」

飯田さんに聞いた「この秋のおすすめ」スタイル
注目3キーワード別・秋のお洒落プラン

「年相応のエレガントさ、きれいな印象を大切にしたい」という飯田さんが、この秋のお洒落プランをいち早く披露してくれた。OHGAの新作アイテムを使った3つの着こなしは、着る人を引き立てるシンプルさと袖を通してわかる実用性の高さが魅力。

着るだけで華やぐ「ボリューム袖」で旬を満喫

「ふんわりとしたボリューム袖ブラウスは、気になる二の腕を隠し、1枚でパッと明るく華やかな印象を与えます。タサキのパールで耳元を彩り、上半身を柔らかな雰囲気でまとめました。ブラウスのウエスト周りは細く見えるように適度にシェイプしつつ、縦の切り替えですっきり感をアップ。シルクっぽいツヤのある上品な見た目ですがポリエステル100%で、お家で洗えるイージーケアの素材です。シワにもならないので、一日中ずっときれいなまま過ごせるのもうれしい。合わせたパンツは、一枚仕立てでオールシーズンはけてお家洗いもできる優れもの。センタープレスのきちんと感は美脚効果も高いですし、さまざまなシーンに対応できるから1本持っておくと便利です。フルレングスのパンツをよりきれいに見せる高さ6cmのヒールサンダルは、ソールとヒールが一体になっているので安定感があり、長時間の歩行もラクちんです」

ブラウス¥31,900・ハイウエストパンツ¥24,200・ラインサンダル¥17,600/OHGA

大人に似合う「チェック柄」で、上品なカジュアルを完成

「秋の気分をいち早く取り入れられるチェック柄ブラウスが主役です。理想のチェックを探しに探してやっと見つけたのが、グレーの濃色ベースで差し色に黄色が入った大人がシックに着られるこの柄。薄いウールの生地に芯貼りしてハリを出しているので、さりげなく高級感が漂います。動いたときにきれいに見えるよう、ボクシーだけれど女性らしいシルエットにこだわりました。ゴム入りの袖口は好きな位置にピタッと留まるので、手首を見せて抜け感を出すにも、ちょっと水仕事をするにも快適。このブラウスを目立たせたくて、すっきりとした白のセンタープレスパンツで清潔感あるスタイルに仕上げました。足元は、パンチがあるけど意外と何にでもなじむゴールドのフラットシューズをチョイス。靴に合わせてアクセサリーもカルティエのゴールドピアスに。ゴールド小物は、チェック柄ブラウスの中の黄色とも呼応し、秋らしい温かみを加えることができます」

チェックブラウス¥28,600・ハイウエストパンツ¥24,200・ストラップパンプス¥23,100/OHGA

長く着られる「2WAYアイテム」でコーデの楽しさが倍増

「お尻まですっぽり隠れる着丈のベージュベストは、裏がアイボリーのリバーシブルで、着こなしによって好きなほうを表にできる特別感のあるアイテムです。色と質感にこだわり、生地からオリジナルで作りました。シルエットは直線的でとてもシンプルなので、サイドにあしらったメタルボタンがアクセントとして映えます。中に着たブラウスは、ボタンで固定・着脱できる花柄の刺繍襟付きです。この刺繍も甘くなりすぎないよう絶妙な柄の大きさ、透け感を追求したもの。今日は、襟を付けるときにあえて中心をずらして固定し、アシンメトリーにして遊びを取り入れました。襟を完全に取り外せば、ブラウスは子どもの学校行事などにも着ていける真面目な1着に早変わり。ボトムはセンタープレスのテーパードパンツで、全身バランスがきれいに見える逆三角形シルエットに。エナメル合皮のシューズのつややかさがスタイルをキリッと引き締めます」

刺繍襟ブラウス¥27,500・リバーシブルベスト¥39,600・マシュマロパンツ¥20,900・ストラップパンプス¥23,100/OHGA

無理なく、仕事と家庭も両立! 
飯田さんのお仕事術

現在中学生2年生と小学生5年生のお子さんを育てながら、OHGAブランドディレクターとして多忙な毎日を送る飯田さんにとって、オンオフの切り替えとは。

「正直に言うと、オフの時間はほとんどないですね。でも仕事は5時までと決めているので、そこが一応の区切りになっています。帰宅してご飯を作って、子どもたちの一日の出来事を聞いて……という家族の時間を大切にしたいので、家では携帯もなるべく見ないように意識しています」

毎日打ち合わせなどで飛び回って、家に一日中いる日は月に2日程度。それでも無理にひとりの時間を作る、という必要性は感じていないというから、きっと仕事と家庭のバランスがご自身の中で取れているのだろう。

「OHGAを5年やってきて思うのは、毎年より楽しくなっているということ。お客様からいただくお声が励みになっているし、中学生の娘が尊敬の眼差しを私に向けてくれるのもモチベーションになっていますね。私が生き生きと楽しそうに働いている姿を見て、娘なりに感じるものがあるようです。だから家の中でもちゃんとしたルームウエアを着ようと思ったりします(笑)。夫も子どもも私の仕事を理解し、応援してくれているからがんばれる。もちろん、仕事が思うように進まず、いっぱいいっぱいになる日もありますが、そういうマイナスの感情を引きずらないで済むのも家族のおかげだと思っています」

気負わず最初の一歩を踏み出す。すべてはその実行力から

信号待ちの最中に素敵な人を見つけてその着こなしを頭の中で分析したり、テレビの出演者の衣装からヒントを得てイメージにぴったりの生地を探したりなど、常に仕事脳を働かせていろんなところからヒントを得ているという飯田さん。しかもそれが、すごく楽しいのだとほほ笑む。一方で「もし最初の1足を作っていなかったら、今も専業主婦をしていたかもしれない」とも語るほど、OHGAが歩んだこの5年は飯田さんにとって予想外の展開だった。

飯田さんのお話を聞いていると、靴職人の友人やアパレル工場の方など、人とのご縁が次のステップに進むきっかけになっていることが多い。同時に、飯田さん自身の「やってみよう」という前向きさ・素直さからくる実行力が、自身の夢を育て、協力してくれる人とのご縁をつなげて前に進む原動力となっているように見える。OHGAが多くの人から支持されるブランドになった理由は、着る人と作る人の感性がとても近いことにあると思う。そして、生き生きと輝きながら年齢を重ねる飯田さんとともに、OHGAのものづくりもきっと進化していく。そんなOHGAのこれからが、楽しみで仕方ない。

YURI IIDA | 飯田由梨

Shop OHGA Director

関西在住、14歳女児、10歳男児の母。学生時代からセレクトショップでアルバイトをし、その後アパレル企業に就職した無類の服好き。2018年5月に自身のブランドOHGAを立ち上げる。服も靴も、デザイン、素材、細部にまでこだわりを持つ。子育ての経験から「お洒落+心地よさ」をものづくりの基準にしている。
https://ohgaofficial.shop/
https://www.instagram.com/yurima_ma/

Photo: Satoshi Yasukochi

Content Writing

Saori Tsuchiya | 土谷沙織

Editor & Writer

美術大学でファッションを学んだのち、女性ファッション誌の編集者として出版社での勤務を経て、フリーランスに転向。ファッション、ヘアスタイル、料理、インテリア、アート、健康など、女性のライフスタイルを中心に執筆。著名人インタビューも多数手がける。30代半ばでヨーロッパに語学留学をしたことをきっかけに、現在も英会話レッスンを日課としている。趣味はウォーキング、山登り。