FASHION
バッグは“名バイプレーヤー”。
着こなしのバランスを整えてくれる
Reported by Ayumi Machida
2021.6.14
ファッションが好きな人にとって、バッグは気分を上げてくれる大切な要素のひとつ。今日はどのバッグを持って出かけようかなと、考えるだけでワクワクするおしゃれのパワーコンテンツだ。最近は、以前のように次々と新しいバッグを買うよりも、いかに自分に合うものを見つけて長く使うかということが大切になってきた。バッグ選びのポイントは? 服と上手にコーディネートするコツは? 雑誌や広告でのスタイリングとともに、ご自身の着こなしも注目されるスタイリスト長澤実香さんが、私物のバッグを紹介しながらサステナブルな時代におけるバッグとの付き合い方を指南。
気づけばつきあいが長くなっているような
“マイ・ヴィンテージ”を育てていく
20歳くらいのときにヴィンテージショップで買ったディオール、スタイリストとして独立してから3〜4年目に買ったクロエ、30代で手に入れた「ボーイ シャネル」、他にもバレンシアガの「エディターズバッグ」やロエベの「アマソナ」、ボッテガ・ヴェネタのイントレチャートなど、さまざまなバッグを使ってきた長澤さん。「スタイリストとしては少ないほう」というが、衣替えのときに引っ張り出して使ってみると、ハマることがある。「母もファッションが好きですが、服もバッグもいいものを少しだけ持っていて、それを大切に使い回していました。その影響なのか、私も服やバッグを手入れしながら、結果的に長く使っています」
きちんとしたセットアップを着ていても抜け感があり、デニムにTシャツでもどこかエレガントなムードが漂う。長澤さんの着こなしはいつも、硬軟、甘辛のミックス感が絶妙。いったいどんな基準でバッグを選んでいるのか聞いてみると、「デザインと実用性が伴っていること」。財布と携帯と手帳、その最低限のツールが入らないと意味がないという。「なぜなら、かわいいというだけでバッグを買っても、私の場合、仕事のツールが入らないと結局使わなくなる。それってサステナブルじゃないような気がします。 やはり日常的に使うことが大事。まずそのバッグが好きであること、そしてデザインと実用性を兼ね備えていることが大事です」
バッグで全体のバランスを整えるのがポイント!
どうやってコーディネートしているのかという質問には「バッグを主役に考えないこと」と意外な答えが。「私はとにかく服が大好きで、着こなしの優先順位は圧倒的に服が一番。次にシューズ、ジュエリー、そして最後にバッグなんです。となるとバッグにコーディネートを左右されたくない。だから最も慎重に選んで買うのがバッグともいえますね」
しかし「主役ではないバッグ」=「ベーシック」では決してない。今回、私物のバッグを使っていくつかスタイリングを見せていただいたが、確かにバッグが主張することなく、かといってなじんで目立たないわけでもなく、着こなしのなかでちょうどいい存在感を放っている。
「私は全身を完璧に同じテイストでまとめるのがあまり好きでなくて。エレガントな服を着たからエレガントなバッグではなく、マニッシュやスポーティなスタイルのときに、あえてエレガントなバッグを合わせる。反対にカジュアルな服を着たときは、クラシックなバッグで緩急をつけてみたり。その日着たい服のコーディネートを、決めすぎずいい感じに仕上げてくれるのが、私にとってのバッグの役割。きちんとしすぎるときに“はずし”の役目を、ラフになりそうなときには引き上げる役目を、バッグはスタイリングのバランスを整えてくれる名バイプレーヤーなんです」
バッグしだいで着こなしの楽しさは倍増する
たとえば、今回2パターンのスタイリングに合わせた、グッチの「ホースビット」のトップハンドルバッグ。「日常的に使うバッグは黒がほとんど。ヴィンテージライクなルックスで、現行のアイテムなのにどこか懐かしさを感じさせるタイムレスなグッチのバッグは、爽やかな白いシャツドレスでも、アディダスのパンツを使ったスポーティなスタイルでも、服の魅力を上手に引き出してくれています。少しかしこまったシーン、たとえば子どもの入学式でも活躍しました」
ヴァレクストラのバッグ「イジィデ」は、形は王道ながらイエローを選んだことで華やかさが加わった。「セットアップスタイルにこのバッグを持つとキャリアなムードですが、たとえばグレーのスウェットにカーキのパンツみたいなメンズっぽいスタイルにこのバッグを合わせて、さらにパールを添えて赤いルージュをつけるとまた違ったキャラクターになります。なんでもないスタイルでも何かがあるように魔法をかけてくれる、優秀なバッグだと思います」
遊び心のあるデザインも、素材感や色合いしだいで着こなしに変化を生んでくれる。「昔から大きいクラッチバッグが好き」という長澤さんの最近のお気に入りは、ボッテガ・ヴェネタの「ミディアム ポイント」。「ファブリックなのでかしこまった感じにならないのがいいですね。収納力も抜群。黒などシックなカラーでまとまりすぎず、少しハデに、軽快にスタイリングしたいときに活躍します。私は和装も大好きなのですが、着物とカラーコーディネートしたらどうなるかなと夢がふくらみます。白髪になったときにも似合いそう」
年を重ねても、ずっと使いたいバッグを選ぶ
今回撮影に持ってきてくださったバッグは、どれも10年後、20年後、30年後にも使っていたいと思って買ったものばかりだという。「ベーシックという意味ではなく、年を重ねた自分を想像したときに、そのバッグを素敵に持っている姿がイメージできるかどうか。年齢とともに自分も変わるし似合う服も変わっていくと思いますが、その歳月にずっと寄り添ってくれるバッグを選ぶようにしています。だから持っているバッグはどれも日常的に使うものばかり。ずっと使ってきたし、これからも使い続けたいと思っていますが、答え合わせはもっと先になりますね。そのときが楽しみです。これからも私の着こなしのバランスを取ってくれる、名バイプレーヤーであり続けてくれると思います」
Mika Nagasawa|長澤実香
Stylist
多くのファッション誌や広告で、ハイファッションからヴィンテージ、ジュエリー、メンズ、ベビー服と、さまざまなジャンルで活躍中。女優やタレント、モデルからも絶大な支持を得る。自身のOL経験を生かしたお仕事スタイル提案や、切れ味のいいコメントは説得力抜群。占星術にも詳しく、ELLEのインスタなどでたびたび行われている、ヒーラーYujiさんとのトークライブも人気。
https://www.instagram.com/nagasawamika/?hl=ja
Photo: Shun Yokoi
Editor’s Note取材メモ
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実用性が大事。たくさん使えばますます愛着がわく
長澤さんのバッグ選びの基準は、仕事ツールがきちんと収納できて、日常的に使いやすいということ。確かにバッグはたくさん使ってこそ。実用性を優先するのは無粋かと思っていたが、長澤さんにそう言っていただき勇気が出た。
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コーディネートの仕上げはバッグで!
コーディネートに合わせるというより、コーディネートの可能性を広げてくれる存在という考え方は目からうろこ。全体のバランスをバッグで調整すれば、おしゃれはもっと楽しくなりそう。
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立ち止まって振り返ることの大切さ
「ファッションとサステナブル」について取材を受けることが増えて、改めて今の自分とクローゼット、ライフスタイルについて再構築したいと考えているという長澤さん。そうして時折立ち止まって自分を振り返ることで、ファッションとの素敵な関係をキープしているのだと思う。
Content Writing
Ayumi Machida | 町田あゆみ
Editor
マガジンハウスで『Hanako』『Olive』『BRUTUS』『GINZA』編集部を経て、フリーランスに。『ELLE JAPON』でコントリビューティング エディターを務めるほか、ファッション、ライフスタイル分野で雑誌、書籍、WEB、広告の企画・編集やコンサルティングなどを手がける。犬と器と旅と韓ドラが好き。『エル・デジタル』で不定期に行われている「韓ドラあるある座談会」のメンバー。