EXERCISE
美しさは姿勢から! “ほぐピラ”の星野由香さんに教わる姿勢の整え方
Reported by Minako Nishimura
2022.9.15
続く在宅ワークの影響もあり、姿勢の悪さに悩む人が増えている。正しい姿勢に整えるためには、どういう方法を取り入れるべきか。そんな問いかけに対し、「まず、“感じること”を見直してほしい」と話す、パーソナルトレーナーの星野由香さん。「ほぐす」+「ピラティス」=「ほぐピラ」を提唱する星野さんが考える、体と心の向き合い方、そして姿勢を整えるためのメソッドを紹介する。
ボディメイクの鍵は「自分の感覚」を大事にすること
現代は、単純明快さが求められることが多い。ボディメイクについても例外ではなく「おなかやせにはこの筋トレ!」「このツールを使えばOK」というような、わかりやすい方法論やアイテムが話題になりやすい。もちろん、それにはいい面もある。理解しやすいし、やる気にさせてくれる。けれど、それは時に大事なものを置き去りにしてしまうのではないか。それが「自分の感覚」だ。
この「自分の感覚」の認識こそ、星野さんは大事にしてほしいと話す。
「感覚は人それぞれ違うもの。同じ内容のエクササイズでも、ある人にとっては簡単、別の人にとっては刺激が強すぎると感じる場合もあります。何が良い・悪いではないし、同じゴールを目指すものでもないのです」
トレーニングをする際、「先生と同じ動きができないといけない」「決められた回数をこなさないといけない」と考える人も多いのではないだろうか。
しかし、ボディメイクとはそういうものではないと星野さんは言う。
体を右側にひねりにくい……、同じエクササイズでも昨日よりも体が動かしやすい……。そんな自分オリジナルの感覚を積み重ねることで、鈍っていた神経が徐々に目覚め、体を正しく動かせるようになる。それこそがボディメイクなのだそう。
“ほぐピラ”で目指す、しなやかな体づくり
「私が提案する“ほぐピラ”は、筋肉や筋膜のコリをほぐす+ピラティスの動きを使って鍛えることを基本としたメソッドです。コリや老廃物がたまった状態だと関節の可動域に制限がかかり、何か動作を行うにしても“動かすべき筋肉”ではなく“動かしやすい筋肉”ばかりを使ってしまう。するとボディラインも偏ってしまいます。だから、コリをきちんとほぐしてから鍛えることが必要なのですが、そのときに感覚を意識していただきたいのです。体のどこが伸びていて、どこが縮んでいるのか。痛気持ちいいのかつらいと感じるのか。呼吸はしやすいのか……。筋肉や関節、神経、呼吸の感覚を積み重ねていくことで全身の感覚が統合されて、しなやかに体を動かせるようになっていきます」
“感覚が統合される”と、言葉で聞くだけではピンとこないかもしれないが、“ほぐピラ”を実践してみると腑に落ちる。
体が軽い、ポカポカと温かい。呼吸が楽になり、今までになく頭がクリアになっている。手足がスムーズに動かせる。コリや老廃物が流れて“全身が開通”し、体の組織や呼吸が“正しい状態”に整う……それが“感覚が統合される”ということなのだろうと気がつく。
もちろん、すぐには変わらないが、続けていくことで心地よい体に変化していくのを実感できるようになる。
“ほぐピラ”は、ランブルローラーやビースティーボールのような突起がついたツールを使うことが多いのも特徴だ。これらは筋肉や筋膜の深い層にアプローチしてほぐすのに役立つが、圧をかけることで感覚にも働きかけ、体の変化により気づきやすくしてくれるという。
「エクササイズを行うにあたり、『回数は何回行えばいいですか?』『ほぐしの強さはどれくらいが正しい?』という質問を多くいただきます。それについては、目安はあっても正解はなくて。回数や刺激の強さはご自身の感覚に合わせて決めていただくのがよいと思っています」
たとえ回数が少なくても、思うような動きができなくても“感じる”ことで、神経の伝達が促されて体は整っていくそう。
“感覚”というものの影響の大きさに驚いたが、正しい姿勢のためにも“感覚”は欠かせないファクターなのだと星野さんは話す。
姿勢を整えるために。「正しい状態と背骨の可動域」を知る
「そもそも姿勢とは何かというと、地球の重力に耐えるための方法なのです。人類は二足歩行で重力に逆らって生きていますが、そのために常に重心をとらえながら動く必要があります」
重心とは、シーソーの支点にあたる場所であり、人体だと骨盤のあたり、ヨガでは丹田(おへその4〜5㎝下あたりの位置を指す)といわれている。
美しい姿勢というと、首や背筋がスッと伸び、胸を張った状態をイメージする人が多いが、その状態だと重心が後ろにいってしまいバランスを崩しやすくなる。本来は、体の前方で重心をとらえ、重心線と呼ばれる軸を意識してほしいと星野さんは言う。
「正しい姿勢になることが最終目的なのではなく、しなやかに動けるようになることが大事なのであり、そのために重心線を意識した姿勢をとる必要があります」
正しい状態を知るために、意識したいのは「重心線」
重心線とは、頭頂部から後頭隆起、椎骨棘突起などをつなげた、前から見て体の中心を通る線。重心線を意識するにあたり、星野さんがその方法を教えてくれた。
壁を利用してチェック!
① 頭、胸椎のいちばん出っ張っている部分(ブラのホックの上あたり)、お尻、かかとが壁につくよう、真っすぐ立つ。
② ①の状態をキープし、丹田と胸骨柄(きょうこつへい、胸骨のいちばん上の部分)の位置を意識しながら吸って吐いてを行う。最初は点と点だが、呼吸を行うことで点同士がつながり、一本の線としてイメージしやすくなるはず。
「丹田の場所がわからないとおっしゃる方もいますが、丹田はそもそも目に見えるものではなく、空間の力点を指します。
体の中には、腹腔や胸腔などの“空間”が存在しています。骨や筋肉をベースに考えるのではなく、軸はその空間の中にあると思って、呼吸を行いながら丹田と胸骨柄のラインを意識してみてください。正しい姿勢のポジショニングがとりやすくなりますよ」
「背中のしなやかさ」も姿勢を整える大事なファクター
姿勢のためにもう一つチェックしたいのが、背骨の可動域。ここの可動域が広がることで呼吸がスムーズになり、姿勢を整えやすくなるという。
「軸骨格がきちんと機能しているかどうかは、姿勢に関する重要なチェックポイントです。軸骨格とは頭蓋骨や胸郭、脊柱など、中心体軸としての機能を持つ骨格のこと。大切な臓器や内部構造を保護する役割を担っています。その中でも、背骨がしなやかに動くかどうかで、美しく見えるか、そうではないかの印象がかなり左右されます」
「背中ひねり」で背骨の可動域をチェック
① 椅子に座り、胸の前で腕をクロスする。足の指はしっかり床につけたまま、左右のかかとを浮かせてくっつける。このポジションをとることで骨盤を安定させることができる。
「骨盤が動いてしまうと可動域のチェックができないので、必ず座り、この形で行いましょう」
② ①の姿勢をキープしたまま前傾する。背骨を上から丸めていくイメージで行うこと。
「前傾するときは胸椎を意識しましょう。呼吸を止めないように注意してください」
③ 背中を後ろに反らす。勢いをつけず、ゆっくり行うこと。
④ 体を右側にひねり、前傾する。呼吸をしながらゆっくりと。
⑤ ④の状態から体を後ろに反らし、さらに体を右にひねる。無理はしすぎず、つらいと感じる一歩手前を目安にひねること。目線は右上の天井に。左側にも体をひねり、④⑤と同様の動きを行う。
「大切なのは、この動きを行ったときにどう感じるかです。あまり動かないな、とか、右の方がひねりやすい、というように“今、体に何が起きているか”を、ご自身で感じていただくだけでいいのです。
①〜⑤を1度行ったら、再度同じ動きを繰り返してください。最初に行ったときより体が動くのが感じられるはずです」
POINT!
「お尻の下にNABOSOのインソールを敷いてチェックするのもおすすめです。可動域チェックは、骨盤を安定させて胸椎をたくさん動かすことが大切なのですが、そのためには、坐骨を動かさないことがマストなのです。このインソールのように突起があるものをお尻の下に敷くことで、坐骨の位置をしっかり感じることができ、安定させやすくなります。
NABOSOのインソールやマットは程よい刺激を与えてくれるので、感覚センサーを磨くのにとても役立ちますね」
「今は選択肢が本当に多くて、自分の感覚を大事にしないと、選択することすらできなくなってしまう。そんな危機感を抱いています。ただ流されるままに方法論やツールを消費するのは、サステナブルではないですよね。
今回お伝えした2つのメソッドは、姿勢を正すのはもちろん、感覚を磨くのにも有効だと思います」
長時間のデスクワークや運動不足によって、体は縮こまって、姿勢がゆがむ。
たくさんの情報に圧倒されて、感覚の広がりも失われてしまう。
そんな現代を生きている私たちにとって、星野さんが教えてくれた“感覚”の大切さは、ボディメイクのみならず、日々の生活を見直す大きなヒントになるものかもしれない。
YUKA HOSHINO | 星野由香
パーソナルトレーナー
ピラティスインストラクターをはじめ、ボディメイクや健康に関する多くの資格を持つ。10代の頃より人体構造に興味を抱き、理論・実践の両面から見識を深める。東洋医学や西洋医学の知識、パーソナルトレーナーとしての自身の経験などをもとに、独自のメソッド・ほぐピラを考案。確かなその効果が評判を呼び、俳優やモデルなど、多くの著名人のボディメイクを担当する。プライベートでは2児の母でもある。
Instagram:@yuka.hoshino222
Photo: Yuichi Iwaya
Content Writing
Minako Nishimura | 西村美名子
Beauty Editor/Writer
ファッション誌のビューティ担当として15年以上キャリアを積んだ後、フリーランスに。現在は美容メディアを中心に、編集・ライターとして企画、執筆を行う。ジャンルはスキンケア、ヘア、メイク、ヘルスケア、美容医療など。日課は美容系・テック系のPodcast視聴。無心で海釣りする時間がここ最近の癒やし。