Live Active® LIFE

EXERCISE

カリスマトレーナーに聞く、パフォーマンスの高いカラダづくりの極意

Reported by Yumiko Murata

2021.6.14

コロナ禍も2年目に突入。私たちのライフスタイルは一変し、仕事のあり方も、友人との付き合い方もままならない状況が続いている。そんななか、大切なのはいかに身心を健やかに保てるかどうか。活動量が圧倒的に少なくなってしまった今、見直すべきは自身のコンディション。あなたのカラダは、縮こまっていないだろうか? 思いのままに動かせるだろうか? いま一度、ライフパフォーマンスの高いカラダを取り戻すために、心がけるべきことを、コンディショニングコーチであり、世界のトップアスリートのトレーナーである「R-body project」の荒井秀幸さんに伺った。荒井さん直伝の動けるカラダを養うエクササイズをぜひ取り入れたい。

運動をしなくてはいけない? いや、その前にやるべきことがあった!

ところどころにグリーンがあしらわれた、明るく広い空間に設置されたトレーニングマシーンの数々。荒井さんが所属する「R-BODY CONDITIONING ACADEMY(以下R-body)」は、一見、おしゃれなジムのようだが、「ここはフィットネスジムではなく、コンディショニングアカデミーです」と語る。

コンディショニングとは、今の体調をより良い状態にする、あるいは良い状態であればそれを維持するすべてのプロセスのこと。「R-body」ではトレーニングはもちろんのこと、栄養やアロマによるコンディショニングのほか、ドクターや医療機関との連携も完備している。「筋力を高める、汗をかいてリフレッシュする、ダイエットする、といった運動の3大目的のほかに注目されつつある、第4の目的、『コンディショニング』に特化しており、カラダの不調を整え、ライフパフォーマンスを高めることにフォーカスしています」

「例えば、ひどい花粉症の場合、薬局に行って薬を買って症状を抑えることもできますが、そのアレルギーはスギなのか、ヒノキなのか、またはハウスダストなのか、病院で検査をして原因をつきとめることが大切。そして症状に本当に合った薬をお医者さんに処方してもらうことで、初めてきちんと効いてきますよね。トレーニングも実は同じ。トレーナーがその人のカラダをちゃんと評価して、今どこにコンディション不良が起きているかチェックしてからトレーニング内容を決めるのが本来あるべき形なんです」

「もちろん状態がよい人がさらによくなるためにカラダを鍛えるのはとても有効なこと。でも状態の悪い人が悪いままカラダを鍛えたら、逆効果になることのほうが多いですね」

最近ではパーソナルトレーニングを受けている人も多いと思うが、確かにそこまで細かくコンディションチェックを受けられるところは稀かもしれない。ましてや自己流でエクササイズをしている人は、不調を感じてもその根本原因に気づかず、カラダに無理をかけている可能性もあるのだ。

目指すはトレーナーがいなくても、自分でコンディショニングできること

「コンディションは人によってもまるで違うし、同じ人でも日によって変わってきます。できれば毎日コンディショニングするのが理想」と荒井さん。とはいえ、毎日、通ってトレーナーのチェックを受けるのはさすがに難しい。

「最初に、『ここはコンディショニングアカデミー』と言いました。アカデミーとは、カラダだけでなく頭も鍛えるという意味なんです。例えば、腰痛もちの人がいたとします。腰にシップを張ったりマッサージしているかもしれませんが、痛みの原因を作っているのは、腰とは別の部位にあることがほとんどです。実は背骨の上部が丸まり、猫背になっていることで肩がうまく動かないから肩の代わりに腰を過剰に動かして腰が痛くなる……と根本原因がわかったら、腰をマッサージするのではなく、背骨を動かすことを始めますよね。そうやって自分のカラダの状態を頭でも学んでもらうことで、トレーナーがいなくてもコンディショニングできるようになります。そうなると出張中でも、海外旅行中でもトレーナーがいない環境でもカラダのコンディションを維持することができます」

「R-body」のエントランスの横には、スポーツや健康に関する本もずらり。コンセプトのアカデミーらしさが伝わってくる。https://r-body.com/

ではパフォーマンスのよいカラダとは、具体的にどういうカラダなのだろう。「まずは、腰痛や肩コリ、首コリなどの痛みがないこと。そして自由自在に動けること」と荒井さん。

「今はリモートワークが主流になっているので、パソコンに向かう時間が飛躍的に増えています。カラダがカチコチに固まっている人がほとんどだといってもいいでしょう。その状態で、何か趣味のスポーツをしようとしてもカラダは思うように動かない。それではライフパフォーマンスが高いとはいえません」

効率よくライフパフォーマンスを上げていくために、まずは自分を知る

「ライフパフォーマンスの高いカラダを手に入れるには、まず、自分のコンディションを把握することが大前提。ラジオ体操でもよいので、できれば毎日、運動をしてカラダの動き具合や可動域などを定点観測することをおすすめします。そしていつもとちょっと違うというポイントがあったら、コンディショニングをしてあげる。もし、自分でのチェックではよくわからないという人は、トレーナーに1回でもいいから見てもらうことをおすすめします。歪みや動いていない箇所、クセなど全般的に評価してもらい、それに応じたエクササイズを提案してもらうといいでしょう」

スタジオ内には骨や筋肉の模型があり、どういった動きがどんな不調につながるのかを細かく説明してくれる。可視化することで自分の体に何が起こっているのかをよく把握することができ、同時に動きのクセも知ることができる。

さらに「エクササイズの効率を上げるツールに頼ることもおすすめ」と紹介してくれたのが、「R-body」にあるエクササイズマシーンだ。

「これはパワープレートといって高速振動を起こすマシーンです。振動を受けることによって血流が促進し、カラダの柔軟性も高まります。またこの振動は縦にも横にも360度全方位で起きているので、その揺れに耐えるために通常以上に筋肉が使われるんです。つまり同じスクワットでも普通の地面でするのとパワープレートの上でするのとでは、運動負荷に大きな差が出てきます」

振動面に水の入ったボトルを置くと、振動によって液体が撹拌されているのがわかる。これと同じように、カラダの中の液体は急速な振動によって動かされ、血流が促進される。

1日数分でもいい。今日から始めたい4つのエクササイズ

コロナ禍では何もしていなければ、ライフパフォーマンスはどんどん落ちていく一方。そこで今だからこそ実践したいエクササイズを荒井さんが教えてくれた。パワープレートを使えばさらに運動効果が得られるが、ない場合は床の上でもぜひ実践したい。

1.ヒップリフト

床に横になり、膝を立てる(写真ではパワープレートと同じ高さになるベッドを使用)。そのまま膝から胸までが一直線になるようにヒップを上げる。このときつま先を上げることで、ふくらはぎに余分な力が入らず、効果的に運動効果を得ることができる。また腰が反らないように注意すること。30秒間キープ×2セット。

「このエクササイズには、股関節を伸ばす目的もあります。リモートワークでは座っている時間が長いため、どうしても股関節が圧迫されがちです。大きな動脈が流れている股関節を伸ばしながらしっかり動かしてあげることで、下肢の血流も改善します」

2.プランク

両手両足を肩幅に開いて床につき、両手とつま先でカラダを支える(写真では手をパワープレートに)。このとき頭から体までが一直線になることが最大のポイント。体幹が使われているのを意識しながら30秒間キープ。2セット。

「体幹を鍛える目的もありますが、手がパワープレートに触れていることが最大のポイント。手、腕、肩甲骨の骨はつながっていて、この種目では手で受けた振動が肩甲骨にまで伝わり、肩甲骨を正しい位置に戻してくれるんです。その結果、上半身の姿勢がきれいになります。猫背になりかけている人に特におすすめです」

3.スクワット

腰幅に足を開いて立ち、椅子に腰かけるようにお尻を突き出しゆっくりと腰を落としていく。このとき膝がつま先より前に過剰に出過ぎないように。また膝の向きもつま先と同じ方向であることが重要。太ももが床と平行になったら、ゆっくりと腰を上げてもとの姿勢に。10回×2セット。

「スクワットは下半身強化の種目と思われがちですが、しゃがんだときにかかる重力に耐えるために全身が使われています。全身を一気に鍛えたいときにおすすめの種目です」

4.バランス

立った状態から両腕を真横に肩まで上げ、上体を倒しながら片脚を後ろに上げていく。このとき前脚の膝を軽く曲げるとバランスがとりやすい。目標は頭から足まで一直線になること。30秒間キープして反対側も同様に。揺れてなかなか姿勢がキープできないという人は、片手を壁についてもOK。

「日常生活では、歩く、階段を上るなど、片脚での動作が意外と多い。どれだけきれいに両脚で立った状態が整えられていても、片脚になった途端にバランスがくずれてしまったら、ライフパフォーマンスに支障が出ます。片脚で行うエクササイズも日常的に取り入れるようにしましょう」

「Exercise is Medicine」運動習慣をつけることで、毎日も未来も変わる!

先ほどのエクササイズは筋肉痛などがなければ毎日行うのが理想的。ただ忙しくて時間が取れないという場合は1分でも30秒でも続けてほしい、と荒井さん。

「大切なのは運動の習慣をつけること。そのためには週に1回、きっちり汗をかくほど運動をするというよりも、毎日少しでもいいので続けることが効果的と言われています」

例えば、朝や仕事終わりなど、運動する時間を決めるのも、習慣づけるいいきっかけに。

「おすすめは朝のエクササイズ。代謝が上がり、日中の活動量を増やすことができます。ただし起き抜けは無理はしないこと。また夜のエクササイズはせっかく代謝を上げても眠るだけなので少しもったいない。夜にカラダを動かすのなら副交感神経にスイッチを入れるようなストレッチがよいでしょう」

「トップアスリートも毎日コンディショニングでカラダを整えています。R-bodyでは『ホンモノを身近に』をコンセプトに、トップアスリートに提供しているサービスを、一般のみなさんにお届けしているところ。今は大手町、恵比寿、柏の葉と店舗が限られていますが、もっとこのコンディショニングを広く浸透させて、例えば歯磨きをするのと同じように、皆さんが当たり前のように毎日コンディショニングする……そんな世界を目指したいと思っているんです」

コンディショニングをしてカラダを正しく動すことができたら、日常の動作でどんどんボディラインもきれいになっていくし、10年後、20年後の健康にもつながる。何より仕事にもプライベートにも全力で打ち込むことができる。それはまさにライフパフォーマンスの高いカラダを手に入れられるということ。

荒井さんが目指すとおり、一人でも多くの人に実現できたら、もっとみんなが幸せになって、未来がもっと明るくなる気がした。

Hideyuki Arai|荒井秀幸

R-body project Technical Director
Power Plate マスタートレーナー

東京都出身。大学時代にオーストラリアに留学、その後大学を卒業後、トレーナーを目指して専門学校に入学。2010年にR-body projectに入社し、2017年にテクニカルディレクターに就任、現在に至る。トップアスリートのコンディショニングのほか、専門学校や大学の講師、フィットネスクラブや治療院、病院のアドバイザーなど幅広く活躍中。「Exercise is Medicine(運動は万能薬)」と運動の無限大な可能性を多くの人に啓発している。
https://r-body.com/

Photo: Kazuhiro Goda

Editor’s Note取材メモ

  • オンラインレッスンを通して、改めて気づかされたこと

    トップアスリートだけでなく、これまでに多くの人々を指導し、いろいろなカラダとコンディショニングによる変化を見てきた荒井さん。顧客の通うペースは人それぞれだが、やはり“継続”がすべてだとコロナ禍で気づかされたという。

    「昨年の緊急事態宣言の際に、無料のオンラインレッスンを公開したんです。そのとき週に1回のペースで通っていたお客さまが、自宅で毎日レッスンをするようになって、各段に体調に変化が出ました。週に1回汗をかく運動もいいですが、やはりそれは非日常。毎日コツコツと続けることの力に改めて気づかされました」

Content Writing

Yumiko Murata | 村田由美子

Beauty Editor

元『ELLE』ビューティ ディレクター。ファッション誌のビューティ担当を20年以上続け、フリーランスに。『エル・ジャポン』『エル・オンライン』のほか美容誌などでも執筆。食べることと赤ワイン、南の島をこよなく愛し、美容に悪いと思いつつもバカンスでは太陽をたっぷり浴びている(その分ケアもしっかりしています笑)。趣味はダイエットと歌うこと。