BEAUTY
髪は夏に年をとる!? 今こそ、“老け髪”をリセット!
Reported by Yuumi Fujii<dis-moi>
2021.9.16
秋の風を感じる今ごろ、鏡を見てふと気づく髪の変化。パサつきや髪のヘタリ、さらには抜け毛や白髪が増えるなど、髪の悩みは深刻さを増すばかり。ヘアスタイルが決まらないと気分まで落ちてしまうから、何とかしたいもの。そこで、毛髪診断士としてカウンセリングやセミナーでこれまでに1万5000人以上の人にアドバイスをしている田村マナさんに、夏が髪に及ぼす影響と、そのリカバリー法を教えていただいた。
紫外線以外にも! 夏は髪を老けさせる原因がいっぱい
“ひと夏すごした肌は5歳老ける”とは言われているけれど、これは何も肌だけに限ったことではない。夏は、紫外線やエアコンによる乾燥、汗や湿気による頭皮の蒸れ、夏冷えなど、髪にとっても過酷な環境。スキンケアはしっかりと対策をしていても、ヘアケアとなるとおろそかになりがちだ。
「ヘアダメージに大きな影響を及ぼすのが紫外線。無防備に浴びることで、髪はパサつきやゴワつき、ツヤがなくなってきます。また、カラーリングをしている人は褪色しやすくなります。ここまでは髪のダメージ。もうひとつ考えなければいけないのが、頭皮のダメージ。頭皮が日焼けし、何もケアをしないでおくと、3~4カ月後には抜け毛や白髪など、髪のエイジング悩みとなってダメージが遅れてやってきます」と田村さん。
さらに紫外線以外にも、髪のダメージを助長させる夏ならではの環境が。
「汗をかくことでシャンプーの回数が増えます。シャンプーのしすぎは、髪、頭皮ともにバリア機能が低下して、乾燥やパサつきなどのダメージの原因に。シャンプーは1日1回、夜に行い、頭皮を健やかにするためにもその日の汚れを落とすのが理想。翌朝寝汗が気になる場合は、シャンプー剤は使わず、湯シャンだけにしましょう。
また、夏は暑さからシャンプー後に髪を自然乾燥しがちですが、ドライヤーを使わず髪を乾かすことでツヤが失われ、パサつくことに。さらに、髪の内側が生乾き状態となるため雑菌が繁殖して、地肌のカユミやニオイの原因にもなります」
ドライヤーの熱が髪のダメージにつながると思っている人がいるけれど、正しい使い方をすればダメージどころか、美髪へつながる。よかれと思っていたお手入れで、逆の結果を引き起こしていたらそれは残念だ。
毛髪と頭皮、必要なケアはそれぞれ違う
「ヘアケアというと、髪ばかり目がいきがちですが、髪と頭皮は分けて考える必要があります。頭皮は皮膚。顔と同じで、生きている細胞へアプローチすることで、これから生えてくる髪に影響を及ぼします。つまりスキンケアをするように頭皮にもスキンケアが必要なのです。
一方、髪のほうは死んでいる細胞のため、一度ダメージを受けると自己修復ができず、パサつきや褪色、枝毛や切れ毛になりやすい。これをリカバリーするために、手をかける必要があるのです」
頭皮は生活習慣によって左右されるから食事のバランスに気をつけるなど、ライフスタイルの改善を中心に、育毛剤など“攻めのケア”を。髪はこれ以上ダメージが進行しないよう“守りのケア”を強化するのが理想だ。
髪の悩み別、リカバリー法を指南
肌質や肌悩みに合わせてスキンケア法を変えるように、髪も悩みに応じたケアが大切。田村さんに今日からできるヘアリカバリー法を教えていただき、それに合うアイテムを編集部がセレクト。
【パサつき、広がり】
トリートメントのしかたで髪が変わる
「ダメージヘアのリペアにトリートメントを取り入れる人は多いかと思いますが、ただ塗るだけではもったいない。トリートメントは使い方によって髪のまとまりやツヤが格段と変わってきます。ダメージがひどい人やパーマをかけている人は、毎日トリートメントをしても大丈夫。また、スタイリング剤を使う人は、予洗後にコンディショナーをしてからシャンプーをし、トリートメントをするとダメージを軽減することができます」
[トリートメントHow to]
1.シャンプー後にタオルドライをする。
2.手に取ったトリートメントを温めたら、毛先からもみこむように塗布。このときトリートメント用の目の粗いブラシで髪全体にトリートメントを行き渡らせるのがポイント。
<スペシャルケア>
週1~2回は、トリートメントを塗布後、ホットタオルをターバンのように巻き、10分間おいてから洗い流す。
【褪色】
シャンプー後、キューティクルをすぐに閉める
「褪色ケアもインバストリートメントで保湿をしっかりすることが基本。褪色の原因は、シャンプー時にキューティクルが開いて色素が出ていってしまうから。これを防ぐには、洗髪後にできるだけ早くキューティクルを閉めることが大切。髪は濡れているとキューティクルが開きっぱなしになり、水分や栄養が抜け出してしまいます。ドライヤーやヘアアイロンの熱はキューティクルを閉めます。また、髪が乾いた後は、髪に密着する天然毛のブラシでブラッシングをすると、キューティクルが一定方向に整い、ツヤが出ます」
[褪色を抑えるHow to]
1.指で地肌から髪をすくうようにして、20センチくらい離れたところからドライヤーの風を地肌に直角にあてる。
2.指を熊手のようにして髪を上から下に向かって軽くテンションをかけながらのばす。
3.仕上げは、手のひらで表面をコーティングするように、上から下に向かって冷風をあてる。髪がひんやりするまであてるのがコツ。
4.天然毛のブラシで上から下へ、キューティクルを整える。
【抜け毛・薄毛・白髪・うねり】
土台である頭皮を整えてエイジングケアを
「抜け毛や白髪、うねりは、髪というより土台である頭皮のエイジングサイン。頭皮を健やかに保つ保湿ケアをしましょう。おすすめは、天然100%の椿油やホホバオイルを使ったケア。ティースプーン1杯分を頭皮になじませたら5分おいてシャンプーを。栄養を与えると同時に、必要な潤いを残しながら汚れだけを取り除くことができます」
【白髪】
生活習慣の見直しで生えてくる毛を黒くする
いったん白髪になってしまうとあきらめてしまいがちな白髪。ところが、田村さんは、「健やかな生活習慣、正しいケアがあれば、これから生えてくる毛を黒くすることはできます。白髪を防ぐために心がけたいのは、紫外線、ストレス、皮脂汚れ、食品添加物、摩擦の5大ダメージ。また、漢方では生命力に関わる『腎』が弱ったとき(=腎虚)に現れるという考えがあります。加齢はもちろんですが、最近は、仕事やプライベートをがんばりすぎてしまう女性が多く、20~30代にも腎虚が現れ、白髪に悩む女性が増えています。白髪を見つけたら、疲労の原因を振り返り、ゆっくりと休むことも大切。白髪を1本残らずなくすということはさすがに不可能ですが、まだ黒髪に戻る可能性は大いにあります。あきらめずにケアを続けてください」
【頭皮のカユミ・赤み】
抗炎症効果のある頭皮エッセンスでケア
「近年増えているのが頭皮の炎症。原因は一概には言えませんが、ニューノーマルによりストレスが増大し、頭皮のバリア機能が低下していることが関係していると思います。また、40代になると皮脂の状態が変わり、バター状になるため酸化しやすくニオイの原因にも。カユミはストレスにもなりますから、抗炎症効果がある頭皮エッセンスをいつものケアにプラスしてみてください」
[頭皮エッセンスHow to]
1.シャンプー後、タオルドライをし、つけたい部分の分け目を露出させる。
2.地肌にきちんとエッセンスがつくよう、ボトルのノズルを直接頭皮につけ、頭頂部を中心に、格子状に美容液を塗布していく。
3.エッセンスをつけた場所を手で優しく押さえてじんわり温めながら、毛根にしっかりと染み渡るように浸透させる。
「ヘアケアを中心にアドバイスをしましたが、健やかな髪を作るのは、確かな栄養です。私は、食事内容を変えることで髪が劇的によくなった例を数多く見てきました。美しい髪を育むには、食事によるインナーケアとヘアケアの両輪があってこそ、と心がけてください」
きちんとケアすることで確実に変えることができる髪。一朝一夕にはいかなくても、正しい知識を身につけて、毎日コツコツとケアすることで美しい髪を手に入れよう。
MANA TAMURA | 田村マナ
Hair Adviser
国際線客室乗務員として世界中を飛び回るなか、機内の乾燥、気圧の変化、時差など過酷な労働環境により肌や髪のトラブルに悩まされ、100人のC A仲間と基礎化粧品ブランドC A101を立ち上げる。現在は美髪アドバイザーとして、美しい髪を手に入れるための基礎知識やオリジナルのセルフケア方法を広めるべく、講演やテレビ出演、雑誌、webメディアなど多方面で活動。また多くのブランドの商品開発の監修やプロデュースも行う。自身が開発&推奨するセルフケア「美髪メソッド」はこれまでに1万5000人以上が体験し、薄毛や抜け毛、白髪といった深刻な悩みが改善。確かな効果を実証し20代〜70代の幅広い年齢層に支持を得ている。『大人の「品」は艶髪でつくられる』(ワニブックス)など著書も多数ある。現在、オンラインにて個別カウンセリングも受付中。お問い合わせはInstagramまで。
Photo: Hisai Kobayashi
Editor’s Note取材メモ
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この秋は新しい環境で本格的な本場の薬膳を学び、ヘアケアアドバイスに活かす予定
この秋にやりたいことを田村さんにお伺いしたところ、「2021年3月から中医学の薬膳料理科を履修していたのですが、この秋からは夫の赴任先がイタリアから韓国へ移り、薬膳学校へ入学します。ここの学校は座学が多いため、調理実習の経験を積むためにも調理学校にも通う予定。この知識を今後のヘアケアのアドバイスに活かすつもりです」
Content Writing
Yuumi Fujii | 藤井優美
Beauty Editor
『ELLE』『Women’s Health』などの雑誌・WEBメディアでも執筆。美容系編集プロダクション「dis-moi(ディ・モア)」主宰。エステティシャンを経て、美容エディターになること25年以上。美容専門誌をはじめ、多くの女性誌で美容情報や女性のヘルス特集を手掛ける。年間、数多くの研究者、医師、美容家などの取材をこなす。